原猪作

原 猪作

原 猪作（はら いさく）は、明治期において日本のキリスト教界で重要な役割を果たした牧師であり、特にその説教の巧みさから「明治時代の名説教家」と称されました。

彼の信仰への歩みは、横浜での学びに始まります。日本の近代教育の黎明期に設立されたヘボン塾に通いながら、同じ横浜で宣教活動を行っていたヘンリー・ルーミスの開催する聖書研究会に参加しました。この集会でキリスト教の教えに触れた原は、その信仰を受け入れ、1874年（明治7年）7月15日、ルーミスより洗礼を受けるに至ります。

洗礼を受けた後、彼は日本のプロテスタント教会史における重要な出来事に関わります。同年9月には、南小柿洲吾をはじめとする18名の人々と共に、横浜において最初の長老派教会である横浜第一長老教会を組織しました。この教会は後に横浜指路教会として発展し、現在に至るまで日本のキリスト教史においてsignificantな存在であり続けています。

神学的な知識を深めるため、原はその後も学びを続けました。ヘボン塾がバラ塾へと改称された後も通学を継続し、さらにクリストファー・カロザースが開設した築地大学校に入学します。1877年（明治10年）に東京一致神学校が設立されると、石原保太郎や田村直臣といった同志と共に、この新しい神学校へ転校しました。東京一致神学校では、ウィリアム・インブリーによる新約聖書の詳細な解説やイエス・キリストの生涯に関する講義を通訳するなど、学問的な側面でも貢献しました。

東京での活動においては、カロザースが牧会していた東京第一長老教会に所属しました。しかし、1877年にこの教会が数寄屋橋教会（後の巣鴨教会）と芝教会に分離する際には、原は数寄屋橋教会に籍を置くことになります。

伝道者としての公式な承認を得るため、原は1878年（明治11年）に開催された日本基督一致教会の第4回中会において、他の12名の神学生と共に教師試験に臨みました。この試験では受験者全員が合格し、それぞれに伝道師としての免状が与えられました。これにより、原も正式に伝道師として認められ、日本の各地で福音を宣べ伝える活動に従事する資格を得ました。

原猪作は、このように初期の日本のプロテスタント教会の形成期において、信仰の探求、教会設立への参与、神学的研鑽、そして伝道師としての働きを通して、その礎を築く上で重要な役割を果たしました。特に彼の説教は、当時の人々に大きな影響を与えたと伝えられています。彼の生涯と働きは、『日本キリスト教歴史大事典』をはじめとする史料に記録されており、日本のキリスト教史を語る上で欠かせない人物の一人です。

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参考文献：
* 『日本キリスト教歴史大事典』 教文館、1988年

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