原生花園

原生花園とは

原生花園（げんせいかえん）とは、人為的な改変がほとんど行われず、自然のままの状態が維持された湿地帯や草原地帯を指します。このような場所では、その土地固有の環境に適応した多様な植物群落が見られ、特に開花期には一面に色鮮やかな花々が咲き誇ることから、「自然の花畑」とも称されます。

名称の広まりと定義

「原生花園」という名称は、当初から特定の地域に使われていましたが、北海道の小清水原生花園が全国的に有名になったことで、他の地域でもイメージ向上などを目的として同様に名乗り始める例が増加しました。しかし、厳密な定義があるわけではなく、北海道以外では「○○湿原」といった名称で呼ばれることが一般的です。

原生花園として知られる場所は、日本国内に点在しており、特に北海道には数多く分布しています。北海道内では、オホーツク海沿岸を中心に、道東から道北にかけて広範囲にわたって見られます。著名な原生花園としては、小清水原生花園、サロベツ原生花園、ワッカ原生花園などが挙げられます。また、北海道浜中町の霧多布湿原も、その自然状態と豊かな植生から原生花園の性質を兼ね備えていると言えます。

日本各地の主な原生花園

原生花園と呼ばれる場所や、性質上原生花園に類する湿地・草原は、各地に特色豊かな景観を見せています。

北海道の原生花園

日本海沿岸
金浦原生花園（天塩郡遠別町）：遠別町の市街地南部、エゾカンゾウが主体で、晴天時には利尻富士も遠望できます。
鏡沼海浜公園（天塩郡天塩町）：原生花園とは称しませんが、エゾスカシユリやエゾカンゾウ、ハマヒルガオなどが自生しています。
サロベツ原生花園（天塩郡豊富町）：広大なサロベツ原野の一部です。
抜海原生花園（稚内市）：稚内市西部の海岸沿い。日本海越しに利尻富士を望み、ハマナスやハナショウブが見られます。近くに展望台があり、利尻礼文サロベツ国立公園内に含まれます。
メグマ原生花園（稚内市）：稚内市中央部、野寒布岬と宗谷岬の中間に位置する海跡湖、メグマ沼周辺。約200種の植物が確認され、ヒオウギアヤメやエゾカンゾウなどが咲きます。交通アクセスも比較的良く、観光ガイドにも掲載されますが、遊歩道はなく国道からの散策となります。

オホーツク海沿岸
エサヌカ原生花園（宗谷郡猿払村）：クッチャロ湖北部の湿地帯。エゾカンゾウやハマナスが見られます。観光化はされていませんが、国道が通っているため訪れやすいです。
ベニヤ原生花園（枝幸郡浜頓別町）：クッチャロ湖北西に広がる大規模な原生花園で、観光化が進んでいます。特にノハナショウブが有名で、夏には一面を紫色に染めます。100種類以上の花が確認されています。
オムサロ原生花園（紋別市）：渚滑川河口域に位置し、ハマナスやエゾスカシユリ、エゾカンゾウなどが見られます。休憩施設のオムサロ・ネイチャー・ビューセンターがあります。
コムケ原生花園（小向原生花園）（紋別市）：コムケ湖周辺。夏はハマナスやコケモモ、秋にはサンゴソウが真っ赤に色づきます。
鶴沼原生花園（サンゴ岬とも）（紋別郡湧別町）：サロマ湖西岸に位置し、サンゴ岬とも呼ばれます。秋のサンゴソウの群落が特に有名です。サロマ湖原生花園とも称されます。
ワッカ原生花園（北見市常呂町）：サロマ湖畔にあります。
能取原生花園（網走市）：能取湖北岸にあり、こちらもサンゴソウがよく知られています。
小清水原生花園（斜里郡小清水町）：全国的にも特に有名です。
以久科原生花園（いくしなげんせいかえん）（斜里郡斜里町）：斜里町市街地の東端に位置し、エゾスカシユリやエゾカンゾウ、ハマナスなどが見られます。あまり観光化はされていません。
野付海岸原生花園（野付郡別海町）：野付半島の海岸部にあります。
北方原生花園（根室市）：根室半島北岸にあり、ヒオウギアヤメやワタスゲ、クロユリ、低木のミズナラなどが見られます。

太平洋岸
霧多布湿原（厚岸郡浜中町）：性質上原生花園に類する広大な湿原です。
あやめが原（厚岸郡厚岸町）：海岸線に沿って花々が咲きます。
豊北原生花園（とよきたげんせいかえん）（十勝郡浦幌町）：十勝川と浦幌十勝川に挟まれた湿地帯。ハマナスやコケモモなど300種類以上の植物が確認されています。観光化されていない穴場です。
大津原生花園・長節原生花園（ちょうぶしげんせいかえん）（中川郡豊頃町）：十勝川と長節湖の間に広がり、スズランやクロユリ、ハマナスなどが咲きます。
晩成原生花園（広尾郡大樹町）：海岸湖ホロカヤントー近くに分布。ハマナス、ハナショウブなどが見られ、近くの晩成温泉が観光拠点となっています。晩成海岸原生花園、晩成温泉原生花園とも呼ばれます。

北海道以外の原生花園

* 世界谷地原生花園（宮城県栗原市）：栗駒国定公園内に位置する三迫川源流部の湿原です。

多くの原生花園は、その貴重な自然環境から「日本の重要湿地500」などに選定されています。

関連項目として、「日本の重要湿地500」など、湿地や自然環境保全に関連する項目が挙げられます。

もう一度検索