叢書 (漢籍)

叢書：中国における書籍集成の歴史と現状

はじめに

中国の学術書において、複数の書籍を集成した「叢書」は重要な役割を果たしてきました。本稿では、叢書の定義、歴史、代表的な叢書、そしてその問題点について解説します。

叢書の定義と分類

叢書とは、多くの書物を一つにまとめたものです。漢籍の分類の一つとして認識されており、『四庫全書総目提要』では、叢書を子部の雑家類に分類しています。現代では、四部分類に加え、叢書部を設ける分類法も用いられています。『十三経注疏』や『二十四史』も定義上は叢書に含まれますが、分類上は経部や史部といった別の区分に分類されます。

歴史

叢書という名称は、唐末の陸亀蒙『笠沢叢書』で初めて用いられたとされています。これは詩文集であり、『四庫全書総目提要』では集部に分類されています。現存する最古の叢書としては、兪経『儒学警悟』（1201年）と左圭『百川学海』（1273年）が挙げられます。『百川学海』は印刷された叢書であり、後世の叢書制作に大きな影響を与えました。

明から清にかけて叢書の編纂は盛んになり、その最大規模のものが『四庫全書』です。20世紀には、『叢書集成』（商務印書館）や『百部叢書集成』（芸文印書館）といった、既存の叢書を集成した二次的な叢書も編纂されました。これらは、蔵書家や出版社が珍しい書籍を出版したもの、特定の時代・地方・分野の書籍を集めたもの、輯佚書など、多様な形態の叢書を収録しています。

顧廷龍主編の『中国叢書綜録』は、中国の図書館が所蔵する近代以前の叢書とその収録書籍を網羅した重要な目録です。しかし、日本の叢書は網羅されていない点に留意が必要です。

問題点

『百川学海』以降、元の書籍をそのまま収録するのではなく、節略したり、抜き書きのみを収録する叢書も少なくありません。また、全ての叢書が厳密な校勘を経ているわけではなく、『四庫全書』においては政治的理由から意図的な改竄が行われた事例も確認されています。これらの点は、叢書研究における課題となっています。

代表的な叢書

以下に、時代別に代表的な叢書を挙げます。

南宋・元

左圭『百川学海』
陶宗儀『説郛』

明

程栄『漢魏叢書』
沈節甫『紀録彙編』
呉琯『古今逸史』
毛晋『津逮秘書』

清

曹溶『学海類編』
『武英殿聚珍版叢書』
『四庫全書』
鮑廷博『知不足斎叢書』
盧文弨『抱経堂叢書』
孫星衍『平津館叢書』
張海鵬『学津討原』
王謨『漢魏遺書鈔』
馬国翰『玉函山房輯佚書』
黄奭『漢学堂叢書』（黄氏逸書考とも）
黎庶昌『古逸叢書』

中華民国

『四部叢刊』（商務印書館）
『四部備要』（中華書局）
『叢書集成』初編（商務印書館）

日本においては、『佚存叢書』『昌平叢書』などが著名な叢書として挙げられます。

まとめ

中国の叢書は、その歴史、規模、多様性において、中国の学術文化を理解する上で欠かせない存在です。しかし、その編纂過程における問題点も認識した上で、個々の叢書の内容を精査していく必要があります。今後の研究においては、より詳細な目録の作成、校勘の進展、デジタル化によるアクセス性の向上などが期待されます。

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