古チュルク語

古チュルク語

古チュルク語は、東古チュルク語またはオルホン・チュルク語とも呼ばれ、チュルク語族の中でも特に古い言語の一つと考えられています。その歴史は7世紀から13世紀に遡り、東突厥やウイグル可汗国によって残された碑文が、現存する最古のチュルク諸語の記録として知られています。

言語資料

古チュルク語の研究における主要な資料は、大きく分けて二つあります。

1. モンゴル高原およびエニセイ川上流域の碑文：7世紀から10世紀にかけて、主に突厥文字やウイグル文字で刻まれた記録です。これには、東突厥による突厥碑文、ウイグル可汗国によるウイグル碑文、そしてイェニセイ・キルギスによるイェニセイ碑文などが含まれます。

突厥文字による言語資料の例：(具体的な碑文の例を挙げる)

2. 天山ウイグル王国の文書：9世紀から13世紀にかけて、ウイグル文字、マニ文字、ブラーフミー文字、シリア文字など多様な文字を用いて書かれた文書群です。これらの文書は、仏教、マニ教、ネストリウス派キリスト教といった宗教関連のテキストのほか、法律、文学、民話、占星術など幅広い分野を網羅しています。また、個人的な手紙なども含まれており、当時の社会生活を知る上で貴重な資料となっています。

音韻

古チュルク語の音韻体系は、以下の特徴を持っています。

母音: 9種類の母音が存在します。

円唇母音は、語の最初の音節にのみ現れます。

子音:
b, d, g, ɢ, l, p, ɾ, tʃ, z は、語頭には現れません。

研究の重要性

古チュルク語の研究は、チュルク語族の歴史や言語変化を解明する上で非常に重要です。碑文や文書の解読を通じて、当時の社会、文化、宗教、政治に関する理解を深めることができます。また、他の言語との比較研究を通じて、言語間の関係や影響を考察することも可能です。

参考文献

Noten zu den alttürkischen Inschriften der Mongolei und Sibiriens (1898)
Talat Tekin, A Grammar of Orkhon Turkic, Uralic and Altaic Series Vol. 69, Indiana University Publications, Mouton and Co. (1968).
M. Erdal, Old Turkic word formation: A functional approach to the lexicon, Turcologica, Harassowitz (1991), ISBN 3-447-03084-4.
L. Johanson, A History of Turkic, in: The Turkic Languages, eds. L. Johanson & E.A. Csato, Routledge, London (1998), ISBN 0-415-08200-5
M. Erdal, Old Turkic, in: The Turkic Languages, eds. L. Johanson & E.A. Csato, Routledge, London (1998), ISBN 978-99929-944-0-5
芮传明 (1998). 古突厥碑铭研究 (illustrated ed.). 上海古籍出版社. ISBN 9787532524693
Ö.D. Baatar, Old Turkic Script, Ulan-Baator (2008), ISBN 0-415-08200-5
松井太「東洋文化講座・シリーズ「アジアの文字文化」講演録「文字文化からみた草原とオアシスの世界」(第68回東洋文化講座(2008年6月27日)」『東洋文化研究』第11号、学習院大学東洋文化研究所、2009年
Erdal, Marcel (2004). A Grammar of Old Turkic, Handbook of Oriental Studies (illustrated ed.). Brill, Leiden. ISBN 9004102949.

関連項目

チュルク語族
突厥文字
* ウイグル文字

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