古屋佐久左衛門

古屋佐久左衛門

古屋佐久左衛門（ふるや さくざえもん）は、江戸時代末期の幕臣であり、兵学者として知られています。元は高松勝次と名乗り、後に古屋家の婿養子となりました。実弟には医学者として名高い高松凌雲がいます。

生涯

天保4年（1833年）、筑後国（現在の福岡県小郡市）で庄屋の次男として生を受けました。百姓を嫌い、医学を志して長崎や大阪へ向かいますが、自身が医者に向いていないと悟り、江戸に出て洋学や剣術を学びました。その才能が認められ、外国奉行・川勝広道の目に留まり、御家人である古屋家の婿養子となります。

文久2年（1863年）には神奈川奉行所の通訳として活躍。英国領事との交渉で手腕を発揮し、幕府内でもその能力が認められるようになりました。元治元年（1864年）には英学所教授方助、慶応元年（1865年）には太田陣屋の普請係を任されるなど、順調に昇進。慶応2年（1866年）には歩兵差図役、慶応3年（1867年）には軍艦役並勤方を命じられ、幕府陸軍の訓練を担当しました。

横浜駐屯のイギリス軍から用兵術を学び、日本初の外国兵書翻訳にも携わりました。英語に加え、オランダ語やロシア語も習得し、漢学、蘭学、ロシア学、算術、砲術、剣術など、幅広い分野に精通。幕府の兵だけでなく、諸藩の者にも英国式操練を指導し、薩摩藩や久留米藩の軍艦購入を斡旋するなど、洋学者として100人以上の門弟を抱えていました。

戊辰戦争

戊辰戦争では、幕府陸軍の歩兵差図役頭取として要職にありました。鳥羽・伏見の戦いでの敗戦後、脱走兵の説得に奔走。帰順させた兵士たちを率いて部隊を再編し、武蔵羽生陣屋に入ります。その後、梁田の戦いにて官軍の奇襲を受け敗北。

鹿沼で部隊を再編成後、会津へ入り松平容保に謁見。部隊名を衝鋒隊と改め、越後方面へと転戦します。飯山戦争では、飯山藩の裏切りにより総崩れとなり敗北。越後を転々とした後、小千谷にて再結集し鯨波戦争に参加しますが、官軍の猛攻に耐えきれず敗退しました。

最期

衝鋒隊はその後も越後で交戦を続けましたが、米沢藩の降伏や若松城下の陥落を受け、会津方面へ撤退。榎本艦隊に合流し箱館へ向かいます。蝦夷共和国では歩兵頭に就任するも、箱館五稜郭での艦砲射撃で重傷を負い、弟・凌雲の治療も虚しく、明治2年（1869年）6月14日に37歳で死去しました。

故郷での顕彰

明治維新後、旧幕臣であったため、長らくその功績が語られることはありませんでしたが、今井信郎の子孫が記した伝記をきっかけに、没後100年以上経った1975年、ようやくその功績が認められ、故郷に顕彰碑が建てられました。

古屋佐久左衛門は、激動の時代を駆け抜けた幕臣であり、その生涯は日本の近代化に大きく貢献しました。

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