古閑健

古閑健：激動の時代を歩んだ陸軍中将

古閑健（こが たけし）は、明治25年（1892年）12月11日に生を受け、昭和59年（1984年）10月18日に逝去した日本の陸軍軍人です。その軍歴は明治、大正、昭和と三つの時代に跨り、最終的には陸軍中将の階級に至りました。

幼少期から陸軍への道

熊本県に生まれた古閑は、徳島県警部であった父、古閑巌彦の次男として育ちました。旧制中学済々黌で学んだ後、若くして軍人を志し、熊本陸軍地方幼年学校、そして中央幼年学校へと進みます。卒業後、大正2年（1913年）5月に陸軍士官学校（第25期）を卒業。同年12月には歩兵少尉に任官し、歩兵第48連隊付となります。彼の最初の実戦経験は、大正3年（1914年）8月から12月にかけての第一次世界大戦における青島の戦いでした。この経験は、若き将校にとって貴重な機会となったことでしょう。

陸軍大学校での研鑽と幕僚勤務

より高度な軍事知識を修得するため、古閑は陸軍大学校に進学し、大正10年（1921年）11月、第33期生として難関を突破し卒業を果たします。陸大卒業生はエリートコースとして認識されており、彼のキャリアもここから大きく広がります。

大正11年（1922年）12月以降、彼は参謀本部付として中央勤務が中心となります。陸軍兵器本廠付（作戦資材整備会議調査班）、陸軍技術本部付兼軍務局課員など、軍の計画や資材、人事に関わる重要な部署で経験を積みました。昭和3年（1928年）8月には歩兵少佐に昇進。さらに専門性を深めるため、昭和5年（1930年）12月から一年間、再び陸軍大学校で専攻学生として学びました。その後は参謀本部員として戦史課に勤務。過去の戦訓を分析し、将来の作戦立案に資する業務に携わったと考えられます。

部隊長、そして日中戦争へ

昭和7年（1932年）8月には歩兵中佐に進級すると同時に、陸軍省人事局付を兼務するなど、中央での重要性が増していきます。また、歩兵第1連隊付、独立守備歩兵第16大隊長といった部隊勤務、さらには東京の警備を担う東京警備参謀兼東部防衛参謀など、実務経験も積み重ねました。

昭和12年（1937年）8月に歩兵大佐に昇進すると、同年12月には東部防衛参謀専任となります。そして昭和13年（1938年）7月、中国大陸における戦線が拡大する中、古閑は歩兵第9連隊長に任じられ、日中戦争に出征しました。この時期、日本軍は武漢攻略を目指しており、彼はこの武漢作戦などにおいて、連隊を率いて前線で指揮を執ることとなります。

将官への昇進と太平洋戦争

昭和14年（1939年）8月、古閑は陸軍少将へと昇進し、歩兵第7旅団長に就任します。旅団長として部隊指揮を続けた後、昭和15年（1940年）8月には国内に戻り、豊橋陸軍予備士官学校長および豊橋陸軍教導学校長を務め、教育畑での任務に就きました。しかし、翌昭和16年（1941年）9月には再び大陸へ派遣され、満州の陸軍公主嶺学校教導団長に着任します。

太平洋戦争が勃発し戦局が激化する中、古閑は昭和17年（1942年）12月に陸軍中将へと昇進。第55師団長という重要なポストに親補されました。第55師団は第15軍の隷下に入り、激戦地となったビルマ方面へ投入されます。古閑は師団長として、この過酷な戦場で部隊を指揮することとなりました。

しかし、昭和18年（1943年）10月には参謀本部付となり、戦場の第一線から離れ、内地へ戻ります。

内地での終戦と戦後

昭和19年（1944年）に入ると、古閑は再び部隊の指揮官となります。1月には留守第51師団長、そして4月には新設された第81師団長に就任しました。第81師団は主に土浦方面に配備され、迫りくる連合軍による本土上陸に備え、徹底した防御体制の構築を進めていました。古閑は師団長として、故国の防衛準備を担う中で、昭和20年（1945年）8月15日の終戦を迎えることになります。

終戦後、古閑は昭和20年（1945年）12月に軍籍を離れ、復員しました。昭和22年（1947年）11月28日には、戦時中の軍人であったため、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）によって公職追放の仮指定を受けています。これにより、政府や公的機関での活動は制限されました。その後は波乱の軍歴を終え、静かに余生を過ごし、昭和59年（1984年）に91歳で死去しました。

古閑健の軍歴は、日本の近代史における重要な局面、特に日中戦争から太平洋戦争にかけての厳しい時代と深く関わっています。幕僚としての計画立案から、青島、中国、ビルマといった戦地での部隊指揮、そして本土防衛準備に至るまで、多岐にわたる経験を積んだ軍人でした。

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
* 外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。

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