可美村

可美村（かみむら）

可美村は、かつて静岡県西部の浜名郡に存在した村です。現在の浜松市中央区の一部（高塚町、増楽町、若林町、東若林町）にあたります。1991年（平成3年）5月1日に浜松市に編入合併し、その歴史を閉じました。本記事では、可美村の前身である浅場村（あさばむら）についても触れ、その変遷を詳しく解説します。

概要

可美村は、二輪・自動車メーカーであるスズキ株式会社や遠州製作所の本社が所在したことにより、豊かな財政を誇っていました。このため、周辺の町村が次々と合併していく中でも、可美村は長らく独立を維持していました。しかし、1961年から1991年までの30年間は、浜松市に四方を囲まれるという特異な状況が続いていました。

合併に至った背景には、都市計画道路が村内で途切れるなどの問題や、廃棄物・屎尿処理を単独で行うことが困難になったという事情がありました。これらの問題を解決するため、1990年（平成2年）に浜松市との合併構想が浮上し、翌年、正式に浜松市に編入されることとなりました。

地理

可美村の地形は、基本的に平坦な浜松平野の一部です。村内には、東西に横切る国道257号線があり、その南側はやや低くなっています。住宅地が多く、田畑も点在していました。合併から30年以上経過した現在でも、市内他地域に比べて高層建築物は少ない傾向にあります。

村内には、高塚川や堀留川などの河川が流れています。

広袤

可美村の広さは、東西約4.3km、南北約1.25kmでした。

人口

可美村の人口は約1万3000人でした。合併前の1990年（平成2年）には13,216人が居住しており、内訳は高塚4077人、増楽2435人、若林4553人、東若林2221人でした。

歴史

浅場村制時代

1889年（明治22年）4月1日：町村制施行に伴い、浅場村が発足しました。当初の大字は、浅田、伊場、海老塚、東鴨江、明神野（現:神田町）、東明神野（現:春日町）、増楽、若林、東若林でした。村名は、当時大きかった地区の「浅田」と「伊場」から一文字ずつ取って名付けられました。
1908年（明治41年）10月1日：浅田、伊場、海老塚、東鴨江の各大字が浜松町に編入されました。
1910年（明治43年）3月28日：大字高塚を入野村から編入しました。
1911年（明治44年）7月1日：浜松町が市制を施行し、浜松市となりました。

可美村制時代

1914年（大正3年）3月10日：村名を浅場村から可美村に変更しました。村名は、当時の浜名郡長である鈴木七二郎氏の漢詩文から選定され、「美しかる可き村」という意味が込められています。
1949年（昭和24年）4月1日：明神野（現:神田町）と東明神野（現:春日町）の各大字が浜松市に編入されました。
1961年（昭和36年）6月20日：篠原村が浜松市に編入されたことにより、可美村は四方を浜松市に囲まれた状態となりました。
1972年（昭和47年）11月11日：村章を制定しました。
1991年（平成3年）5月1日：浜松市に編入合併し、可美村は消滅しました。同時に、大字名の末尾に「町」が付けられました。
2007年（平成19年）4月1日：浜松市が政令指定都市に移行し、旧大字は中区に、旧村域は南区となりました。
2024年（令和6年）1月1日：浜松市の行政区再編により、全域が中央区となりました。

行政

村章

1972年（昭和47年）11月11日に制定された村章は、桜の花をモチーフとしており、「可」の文字を表しています。また、南側の太平洋と北側の南アルプスも象徴しており、「美」は槇の葉で構成されています。

村民憲章

村政70周年を記念して制定された村民憲章には、以下の5つの項目が掲げられています。

自然を大切にし、安全で住みよい環境をつくること
思いやりの心をもち、心身の健康につとめること
仕事に励み、明るく和やかな家庭をつくること
教養を豊かにし、文化の向上につとめること
ふれあいの輪を広げ、たがいに助け合うこと

歴代村長

浅場村長と可美村長の歴代村長は以下の通りです。

浅場村長：大杉邑次、斎田儀助、岡部譲、小池文雄、鈴木民治、菅沼耕造、太田五平、太田助左衛門、渡辺傳吉、大杉喜三郎
可美村長：高橋岩吉、小野田五郎兵衛、高橋平次郎、齋田政平、新村彌市、中村牧太郎、高橋英一、和久田武、高橋榮一郎、杢屋啓次郎、小島静雄、太田保、大場賢治

産業

可美村は、スズキ株式会社の本社が所在していたことから、法人住民税や固定資産税による税収が非常に多く、財政的に恵まれていました。そのため、周辺の自治体が浜松市に合併していく中でも、長らく独立を保っていました。スズキの本社所在地は「静岡県浜名郡可美村高塚300番地」でしたが、対外的には「静岡県浜松市外高塚300番地」として知られていました。

交通

道路

一般国道：国道257号
県道：静岡県道317号米津東若林線、静岡県道326号高塚停車場入野線、静岡県道327号高塚停車場線

鉄道

東海旅客鉄道（JR東海）：東海道本線 高塚駅
日本貨物鉄道：西浜松駅（貨物専用駅、敷地の一部が所在）

教育

中学校

可美村立可美中学校

小学校

可美村立可美小学校

保育園

可美村立可美保育園

幼稚園

可美村立可美幼稚園

施設

可美公園総合センター（可美プール）
城山遺跡

神社

高塚熊野神社
熊野神社
諏訪神社
八幡神社

寺院

如法山高蔵寺
護法院地蔵院
東松山増楽寺
宝珠山威徳寺
大宝山能済寺
大徳山広隣寺
東光山観照寺

出身著名人

久保ひとみ（ローカルタレント）

脚注

注釈

出典

参考文献

可美村役場『可美村勢要覧 '88 わたしたちの可美村』静岡県浜名郡可美村、1988年5月1日。
『美しるべき里可美村写真集』平成３年４月30日発行
『わが町文化誌「美しかる可き里」』平成17年3月15日発行
静岡新聞社出版局 編『静岡県歴史人物事典』静岡新聞社、1991年。ISBN 4783804249。

関連項目

* 日本の廃止市町村一覧

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