台湾中油

台湾中油（CPC）: 台湾のエネルギーを支える国営石油企業

台湾中油（たいわんちゅうゆ、CPC Corporation, Taiwan）は、1946年に設立された台湾最大の石油元売企業です。中華民国経済部に所属する国営企業であり、台湾のエネルギー供給において重要な役割を担っています。旧称は中国石油公司で、略称は中油です。

歴史

1946年6月1日、中国大陸の上海にて中華民国政府100％出資の国営企業「中国石油公司」として設立されました。1949年、国共内戦により中華民国政府が台湾に移転すると、中国石油も共に台湾へ拠点を移しました。台湾における中国石油の事業は、戦後に国民政府が接収した日本海軍の第6燃料廠、帝国石油や日本石油の製油所などの施設を基盤としています。具体的には、高雄製油所（旧日本石油）、苗栗製油所（旧日本石油）、台拓化学工業、台湾総督府天然瓦斯研究所などの施設が統合されました。

1999年までは、台湾の石油産業は安全保障とエネルギーセキュリティの観点から、国営の中国石油が精製・販売事業を独占していました。しかし、台湾プラスチックグループの台塑石化が参入し、市場の自由化が進みました。現在、台湾中油は台湾電力と共に、エネルギー規制緩和に伴う民営化が検討されています。

事業内容

近年、台湾中油は石油の精製・販売に加えて、液化天然ガス（LNG）の輸入・供給事業にも注力しています。1990年には、最初のLNG輸入基地を高雄市北部の永安区に竣工しました。台湾の西海岸を南北に貫くパイプラインも稼働しており、台湾電力や各地の都市ガス会社へ供給しています。2009年には、台中港に第2のLNG輸入基地が完成し、現在では第3の輸入基地を桃園市観塘工業区に建設中です。

国際的な協力関係

台湾中油は、中華人民共和国の中国石油天然気（ペトロチャイナ）と提携関係にあり、日本の三菱商事とも協力関係を結んでいます。LNG分野では、導入時の技術指導で東京ガスグループの支援を受け、2015年8月には戦略的相互協力に関する協定を締結しました。また、INPEXがオペレーターを務めるオーストラリアのイクシスLNGプロジェクトに出資し、年間175万トンのLNGを輸入しています。さらに、三井物産が主軸となって開発中のモザンビークでのLNGプロジェクトでも、JERAと共同で年間160万トンのLNGを輸入する契約を締結しています。

商号変更

2007年、当時の陳水扁政権による台湾正名運動の一環として、「中国石油公司」から「台湾中油」に改称されました。これは、中華人民共和国にも中国石油が存在するため、区別を明確にする目的がありました。なお、改称の際には、「中国石油」から「国石」の文字を削除し、「中　　油」とする例も見られました。

製油所

台湾中油は、台湾国内に3つの製油所を保有しています。

高雄製油所
所在地：高雄市楠梓区
精製能力：270,000バレル/日
特徴：日本石油の製油所と日本海軍の燃料工廠を基盤としており、3つの製油所の中で最も歴史が古い。市街地に位置しているため、公害問題があり、2015年に製油所としての機能を停止し、大林製油所などに移転する予定。
大林製油所
所在地：高雄市小港区
精製能力：300,000バレル/日
特徴：1981年に高雄製油所の分工場として完成した台湾最大の製油所。
桃園製油所
所在地：桃園市亀山区
精製能力：200,000バレル/日
特徴：1975年に台湾で2番目の製油所として完成。

3つの製油所の合計処理能力は77万バレルです。

その他

台湾中油は、モータースポーツのスポンサーとしても活動しています。日本のスーパー耐久シリーズに台湾人ドライバーと日本人ドライバーのチームがホンダ・シビックTypeRで参戦した際に、メインスポンサーを務めたことがあります。

関連項目

十大建設

脚注・参考文献

台湾中油

中国大陸を視野に変貌を遂げる台湾石油産業

台湾の石油産業は、中国大陸との関係性を考慮しながら、変化を続けています。エネルギー安全保障を確保しつつ、国際的な協力関係を構築することが、今後の課題となるでしょう。

台湾石油市場の自由化とその影響

台湾の石油市場は、自由化によって競争が促進され、多様な企業が参入するようになりました。これにより、消費者はより多くの選択肢を得られる一方、エネルギー価格の変動や供給の安定性に対する懸念も生じています。

外部リンク

* 台湾中油

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