台湾鉄路管理局EMU500型電車

EMU500型電車について

EMU500型電車は、台湾鉄路管理局（台鉄）が運行する交流電車で、主に東部幹線と西部幹線の電化区間で活躍しています。1990年代に導入され、通勤輸送の主力として活躍してきました。

導入の背景

EMU500型は、従来の通勤電車（現在の区間車）の輸送力不足を解消し、加速性能を向上させる目的で導入されました。韓国の大宇重工（現・ロテム）が製造し、1995年から1997年にかけて4両編成86本（合計344両）が投入されました。電装品はドイツのシーメンス製を採用しています。導入により、バスに奪われていた通勤客を取り戻し、台鉄の経営改善にも貢献しました。

導入後の課題

2001年に大宇重工がロテム社と統合された後、部品調達が困難になり、保守環境が悪化しました。そのため故障が頻発し、他の車両での代走も度々発生しました。2015年3月以降は、台北、新竹、彰化、嘉義、花蓮の各運転所に配置され、主に区間車として使用されています。

編成

EMU500型は4両編成で、以下の構成になっています。

Mc - T - T - Mc

VVVF：主制御器（VVVFインバータ装置）

車内設備

安全設備：客用扉には挟み込み防止装置が搭載されており、扉が完全に閉まらない場合は発車できないようになっています。また、車掌が扉を操作した後、完全に閉まるまで発車できません。
感応式自動水栓：トイレの洗面台には、手をかざすことで水が出る自動水栓が設置され、衛生的です。
身体障害者用スペース：車椅子スペースが設けられており、安全ベルトで固定できます。また、ホームとの段差を解消するための渡し板も用意されています。

改造工事

後継車両の導入の遅れと現行車両の故障が多発しているため、2015年以降に全編成を対象とした大規模な改造工事が実施されました。主な内容は、以下の通りです。

無段化工事：ドア付近の段差を解消し、バリアフリー化を進めました。
LED旅客案内装置の追加：車内案内表示をLED化し、視認性を向上させました。

これらの工事は、台中市内や高雄市内での新駅開業に伴うホーム嵩上げ工事にも対応するためのものでした。

屏東仕様

屏東県では長年、台湾高速鉄道（高鉄）の延伸や新左営駅での乗り換え改善を求めてきました。前瞻基礎建設計画において、高速鉄道延伸計画の実現には時間がかかるため、当面の措置として、屏東線を走行するEMU500型15編成60両に対して大規模なリニューアルが行われることになりました。

リニューアルされた車両は「優化編成」として2018年9月3日から屏東線内の区間車に投入され、同年10月のダイヤ改正以降は、高雄市内での新駅開業に伴い、高屏間の時短のため区間快車にも優先的に投入されました。外装は、2019年に屏東県で開催された台湾ランタンフェスティバルの仕様に合わせたデザインとなっています。この改造は2019年6月までに全編成完了しました。

リニューアル車の好評を受け、残りの編成とEMU600型にも同様の改造を実施することが決定し、2021年に入札が行われ、6年以内の完了を目指しています。

機器更新工事(IGBT化)

故障率が高いことから、63編成252両を対象に電装品の更新工事も行われました。2018年6月の入札では、台湾の士林電機が海外企業を破って受注しました。制御装置は、シーメンス製のGTOから三菱電機製のIGBT-VVVFインバータ制御に更新されました。また、発電ブレーキを回生ブレーキに変更し、屋根上の抵抗器も撤去しました。2019年末に1編成が更新され、残りの編成も2023年までに更新が完了する予定です。

その他

台鉄としなの鉄道の友好提携を記念して、EMU533編成にしなの鉄道のカラーを施したラッピング列車が2019年1月19日から約3年間運行されました。

関連項目

台鉄大里駅事故
通勤電車
区間車

外部リンク

TRA車両案内 台湾鉄路管理局（日本語）

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