右田年英

右田年英（みぎた としひで）は、文久3年（1863年）に生まれ、大正14年（1925年）に没した、明治から大正時代にかけて活躍した浮世絵師、日本画家です。ただし、生年については文久2年（1862年）とする説もあります。

来歴

右田年英は、豊後国（現在の大分県）海部郡臼杵村で生まれました。幼名は豊彦、通称は豊作といい、梧斎、晩翠楼、一穎斎などの号を用いました。浮世絵師として月岡芳年に師事し、その門下で絵画の基礎を学びました。また、国沢新九郎の画塾にも通い、油絵の技法も習得しています。彼は「東京朝日新聞」などの挿絵画家としても活躍し、錦絵では明治20年（1887年）頃から美人画を描き始め、明治23年（1890年）には3枚続の「春遊三美人」を発表しました。その後、日清戦争や日露戦争といった戦争を題材にした絵や、新聞挿絵、役者絵などを数多く制作しました。明治22年（1889年）には、青年絵画共進会に「福女団扇を執て立つの図」を出品するなど、その画才を発揮しています。

大正5年（1916年）に脳溢血で倒れるというアクシデントに見舞われましたが、その後も創作意欲は衰えず、大正10年（1921年）には、伝統的な木版画の技術を後世に残すため、「年英随筆刊行会」を創設し、「年英随筆」を版行しました。この「年英随筆」は、現在までに14種類の作品が確認されています。彼は生涯、伝統的な木版画の技術継承に尽力し、大正14年（1925年）に63歳でその生涯を閉じました。右田年英の弟には右田寅彦（みぎた のぶひこ）がおり、門下には鰭崎英朋、河合英忠、伊藤彦造、伊東英泰、柚木英尚、天野英雅、山本英春、笹井英昭、福手英宣、武石英郷、山川英茂、松下英業、大野英起、都賀英寛、渡辺英素、山田英辰、寺田英光、松政英輝、大塚正直など、数多くの後進を育成しました。

作品

右田年英は、多様なジャンルの作品を残しており、その代表作には以下のようなものがあります。

「春遊三美人」 大錦3枚続 明治23年
「今川義元桶狭間大合戦之図」 大錦 明治25年 佐々木豊吉版
「英雄三六歌撰」 大錦揃物 明治26年 佐々木豊吉版
「名誉十八番」 大錦2枚続 18枚揃 明治26年
「万死冒大同江敵情探図」 大錦3枚続 明治27年
「膺懲義戦最新歴史 東学党」 大錦3枚続 明治28年
「威海衛陥落北洋艦隊提督丁汝昌降伏ノ図」 大錦3枚続 明治28年
「澎湖島占領佐久間大尉吶喊之図」大錦3枚続 明治28年
「樋口大尉小児を抱いて指揮の図」大錦3枚続 明治28年
「台湾島基隆近衛師団奪敵軍ヲ撃破ス」大錦3枚続 明治28年
「日露交戦紀聞」 大錦3枚続 明治37年 プラハ国立美術館所蔵
「陸戦第一日本軍大勝利定州南門外ニ於テ黒川大尉奮戦ノ図」 大錦3枚続 明治37年
「日露両艦隊二月八日旅順口海戦に名誉なる我水雷艇敵艦三隻を撃沈す」大錦3枚続 明治37年 梧斎落款
「年英随筆 猿曳」 大判 錦絵
「福女団扇を執て立つの図」 肉筆 明治22年
「奉天府城外激戦図」 明治27年（1894年） 大英図書館所蔵
「平壌大捷清将生捕之図」 明治27年（1894年） 大英図書館所蔵
「九連城畔靉河劇戦之図」 明治27年（1894年） 大英図書館所蔵
「日清平壌大激戦之図」 明治27年（1894年） 大英図書館所蔵
「美人十二姿」 大錦 明治34年
「新橋元禄舞」 大錦3枚続 明治38年
「佐々木高総奪馬下於東国之図」 大錦3枚続 明治41年（1908年）
「年英随筆」 大判 錦絵揃物 大正10年 年英随筆刊行会版。「猿曳」、「市原野」、「茨木」など14種類が知られています。

参考文献

右田年英に関する研究書としては、以下のようなものが挙げられます。

日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』（第2巻） 大修館書店、1982年
吉田漱『浮世絵の見方事典』 北辰堂、1987年
吉田漱 『浮世絵の基礎知識』 雄山閣、1987年
太田記念美術館編 『歌川国芳とその一門展』 浮世絵太田記念美術館、1990年
松本品子編 『右田年英と明治の挿絵画家展 : 口絵の中の美人たち』 弥生美術館、1999年
堀川浩之 「仙台の浮世絵師・熊耳耕年の“月岡芳年塾入門記”」 国際浮世絵学会 『浮世絵芸術』 171号所収、2016年1月

外部リンク

描かれた日清戦争 ～錦絵・年画と公文書～(ギャラリーページ) アジア歴史資料センター・大英図書館共同インターネット特別展

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