司馬芝

司馬芝（しば し）

司馬芝（生没年不詳）は、中国後漢末期から三国時代の魏にかけての政治家。字は子華（しか）。司隸河内郡温県（しれいかだいぐんおんけん）の出身。

生涯

若い頃は無名であった司馬芝ですが、楊俊（ようしゅん）から「（族弟の）司馬朗（しばろう）には及ばないが、実際は彼よりも優れている」と評価されていました。動乱を避けて荊州へ向かう途中、賊に遭遇しますが、老母を守って逃げなかった孝心に感じ入られ、母子ともに助けられました。その後、十余年に渡り、荊州で農耕に励みます。

建安13年（208年）、曹操（そうそう）が荊州を平定すると、司馬芝は菅（かん）の県長に任じられます。当時、済南郡（さいなんぐん）では、主簿の劉節（りゅうせつ）一派が盗賊行為を繰り返していましたが、司馬芝はこれを恐れず、手下を兵士として徴用。劉節がこれを匿うと、その罪を郡に訴えました。済南太守の郝光（かくこう）は司馬芝を尊敬していたため、劉節本人を兵士として徴用しました。

広平県令（こうへいけんれい）に転任すると、曹操と旧知の劉勲（りゅうくん）一派が犯罪を繰り返していました。劉勲は司馬芝に手下の赦免を依頼しますが、司馬芝はこれを拒否し、法に基づいて一派を処罰しました。後に劉勲が失脚・処刑されたこともあり、司馬芝の公正さは称えられました。

大理正（たいりせい）を経て郡の太守を歴任し、各地で素晴らしい業績を挙げました。黄初年間（こうしょねんかん）には河南尹（かなんいん）に就任。部下に教訓を与え、職務に励ませました。強者を抑え、弱者を助け、個人的な依頼は一切受け付けませんでした。重臣の董昭（とうしょう）でさえ、司馬芝を恐れて取り次ぎを断念したという逸話が残っています。

黄初7年（226年）、曹叡（そうえい）が帝位に即くと、関内侯（かんないこう）に封じられます。河南尹を11年務めた後、諸王が禁令を破った責任を問われ、免職となりました。陳寿（ちんじゅ）は『三国志』で、「魏の時代から現在に至るまで、司馬芝に及ぶ河南尹はいない」と絶賛しています。

後に大司農（だいしどう）として復職すると、農政担当の官吏が商業で利益を得ている状況を憂い、農業に専念するよう訴えました。曹叡はこの意見を受け入れ、農業重視の政策を推進しました。

司馬芝は誠実な人柄でありながら、品行の正しさを誇示することは決してありませんでした。議論においては相手の欠点を容赦なく指摘しましたが、それが終われば非難の言葉を口にすることはありませんでした。在官のまま亡くなり、遺産は残さなかったと伝えられています。子の司馬岐（しばき）が後を継ぎました。

出典

* 陳寿『三国志』巻12 魏書 司馬芝伝

脚注

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