吉川多喜夫

吉川多喜夫は、1947年神奈川県に生まれ、競輪選手として活躍した人物です。高校を中退後、日本競輪学校に入学し、卒業記念レースでは全勝優勝という圧倒的な成績を収めました。1965年1月にデビューすると、その勢いは止まらず、翌1966年には競輪祭競輪王戦で19歳という若さで優勝を飾り、競輪界にその名を轟かせました。

1967年には全国都道府県選抜競輪も制し、2007年現在、最後の10代での特別競輪優勝者となっています。さらに1968年には高松宮杯競輪と日本選手権競輪を制覇し、伊藤繁、高原永伍とともに神奈川勢による特別競輪年間独占を達成、「神奈川王国」と呼ばれる黄金時代を築き上げました。その中でも吉川は、年間賞金王にも輝き、高原永伍、平間誠記、白鳥伸雄という当時の3強の後継者として目されるようになりました。

しかし、1969年の高松宮杯決勝で5着となって以降、目立った活躍は見られなくなりました。それでも、記念レースや一般戦ではその実力を発揮し、1970年7月28日のレースで優勝した後、自己都合により欠場が続きました。その年の終わりには、吉川の父親による不自然な投票行為が発覚し、競輪界を揺るがす大騒動へと発展します。様々な憶測が飛び交う中、吉川は1970年12月18日付で選手登録を消除され、競輪界から姿を消しました。

この出来事は、当時の競輪界に暗い影を落とし、「黒い霧」事件として語り継がれています。また、吉川の突然の失踪は、隆盛を誇っていた「神奈川王国」の衰退にも繋がったと言われています。現在の競輪界において、吉川は「幻」のような存在となっており、その後の消息も明らかになっていません。

吉川の競走スタイルは、類まれなダッシュ力を活かした自在選手で、当時のトップスピードは最速でした。レースでの位置取りも巧みで、初代3強の一人であった白鳥伸雄は、そのレース度胸を高く評価していました。

主な獲得タイトルと記録

1966年 - 競輪祭競輪王戦（小倉競輪場）
1967年 - 全国都道府県選抜競輪（静岡競輪場）
1968年 - 高松宮杯競輪（大津びわこ競輪場）
1968年 - 日本選手権競輪（後楽園競輪場）
* 年間賞金王1回（1968年）

もう一度検索