吊り出し

吊り出し（つりだし）

吊り出しは、相撲の決まり手の一つで、特に力士の個性や技術が際立つ技です。元関脇の明武谷や元大関の霧島などの名力士がこの技を得意とし、その豪快さから多くのファンに愛されています。

概要

この技は、相手の両廻しを引きながら掴み、しっかりと腰に力を入れて相手を吊り上げ、そのまま土俵の外へと移動させる様子が特徴です。時には相手の胴を直接掴むこともあり、特に体重が重い力士に対しては、その重量を利用して相手を吊り上げることが効果的です。もし、相手が腹部に乗った場合、反撃が非常に難しくなります。また、土俵内で相手を吊り上げて落とすことは「吊り落とし」と呼ばれます。

なお、攻撃を行っていても、どちらかの力士が先に土俵の外に足を出してしまうと、「勇み足」として敗北となりますが、吊り出そうとしている場合は、相手の両足が地に着いていない限り、自分の足が先に外に出ても「送り足」として負けにはなりません。あくまで後方に足を踏み出した場合は、どんなに高く吊り上げていても敗北となります。特に、土俵際で相手を吊り上げる際に体重支えきれず、相手が下がってしまうと「持ち上げているのに負ける」といった事例も見られます。

戦略的な決着

がっぷり四ツの体勢から、瞬時に土俵中央で相手を吊り上げて勝負をつける場合や、土俵際で相手を押し込まれつつも反撃して吊り上げて決着をつける面白い展開がよく見られます。相手の力士が逆に吊り上げての逆転勝利を狙うシーンも魅力的です。特に名手同士が対戦する場合、互いに吊る技術の応酬が繰り広げられるため、観客にとっては大いに盛り上がる瞬間となります。

このような技で勝利を収めることができる選手は「豪快な決まり手」と評価されますが、これは相手の体重を全て受け止める技であるため、強靭な足腰が必要です。そのため、体格が小さい力士は、吊り出しに対して苦手とすることが多いのです。

吊り出しを多用した力士たち

歴史的に見ても、吊り出しを得意とした力士は多数います。大錦卯一郎や肥州山栄、明武谷力伸、霧島一博など、数多くの名手たちがその技を駆使し、記憶に残る名勝負を演じました。特に大錦は、119勝のうち47勝を吊り出しで決めたと言われ、まさに名手の名に相応しい活躍を見せました。

昭和40年代には多くの力士が吊りの技術を高め、多様なスタイルでその技を繰り出しました。しかし、平成に入ってからは力士の大型化が進み、この技の頻度は減少しました。それでも、現役力士の中には、白鵬や栃ノ心など依然としてこの技を駆使する選手が存在します。

歴史的な瞬間

吊り出しは数多くの歴史的な勝負の中で活躍してきました。例えば、1947年の羽黒山と照國の対戦では、羽黒山が160kgの照國を高く吊り上げ、見事に勝利を収めました。この勝利により、羽黒山は連続4回の優勝を果たしました。また、霧島は1990年に千代の富士を吊り出しで下し、その結果大関昇進を果たしました。

吊り出しによる金星

また、吊り出しによって平幕力士が横綱に勝利した例は非常に稀で、特に昭和以降のデータでは15回程度とされています。これらの勝利は力士たちにとって名誉であり、観客にとっても忘れがたい瞬間です。

吊り出しの技を駆使する力士たちの強さと、その多様な戦略は今もなお相撲界において注目されており、技の奥深さと力士たちの競演を楽しむ要素として、今後も語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索