名古屋市水道敷設事務所1号形蒸気機関車

1号形蒸気機関車の歴史

1910年に名古屋市水道敷設事務所が工事目的で導入した1号形蒸気機関車は、その製造がオーレンシュタイン・ウント・コッペル社によって行われました。正式な形式が与えられなかったため、便宜上この名称が付けられました。この機関車は、特に名古屋市の水道工事において3両が使用されていました。

機関車の概要

1号形は、軌間600mm、車軸配置が0-4-0（B）の2気筒単式飽和式ウェルタンク機関車であり、特徴的な設計と性能を持っています。運転整備重量は5.6トン、全長は約4メートル、出力は20馬力という小型機関車でした。製造番号は3761から3763まで付けられ、それぞれ1、2、3という番号が与えられています。

この機関車について言及される文献は少なく、名古屋市水道誌には当時の予算（20,000円）に関する記録がわずかに残っているのみです。

譲渡と改軌

工事が終了した後の1915年には、3両が石川鉄道に譲渡されることになりました。この際、軌間は762mmに改められました。改軌は、ウェルタンクの台枠を修正することなく、シリンダ鋳物の内側にライナーを取り付け、輪軸と軸箱を換装する形で行われました。譲渡後も、機関車の番号は変更されることなく使用されました。

石川鉄道では、1921年の1,067mmへの改軌および電化に向けての工事が完了するまで、この機関車は現役として活躍しました。ただ、1両（番号3）は1920年5月に東濃鉄道へ譲渡されました。その背景には、東濃鉄道が新たな路線開業を控えていたことや、他の機関車の納入が遅れたため、急遽代替機が必要になった事情がありました。この譲渡された機関車は、東濃鉄道でB形と呼ばれるカテゴリーに分類され、新しい番号もそのまま3として使われました。

東濃鉄道での運用とその後

1926年には、東濃鉄道の一部が国有化され、機関車は新たに設立された東美鉄道に譲渡されました。その後、1928年に同鉄道の軌間が1,067mmに改軌される際に、1号形は役目を果たし、廃車となりましたが、その後の詳細な情報は確認されていません。

石川鉄道に残された2両（番号1と2）は、同鉄道の改軌まで使用され続けましたが、戦後の1948年にそのうちの1両が新日国工業京都大久保工場で放置されていた際には、煙室が前方に延長され、煙突も移動されていたことが記録されています。これは、その後の改造や使用方法に対する変遷を示しています。

主要諸元

- 全長: 4,219mm
- 全高: 2,648mm
- 最大幅: 1,549mm
- 軌間: 762mm（元は600mm）
- 車軸配置: 0-4-0(B)
- 動輪直径: 550mm
- 弁装置: マックス・オーレンシュタイン式
- シリンダー直径×行程: 145mm×260mm
- ボイラー圧力: 12.0kg/cm²
- 火格子面積: 0.25m²
- 全伝熱面積: 8.39m²
- 運転整備重量: 5.6t
- シリンダ引張力: 959kg
- ブレーキ方式: 手ブレーキ

同形機の概要

1号形は、20PSの古い設計規格に基づいています。同形機は、外地などを含めて日本に22両が存在しました。この中には1907年に製造された釜山温泉軌道や、1908年の台湾製糖など、さまざまな用途の機関車が含まれています。

1号形は、日本の鉄道史の中でも特に重要な存在であり、その構造や使用状況は、蒸気機関車の発展を語る上で欠かせない要素となっています。

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