名古屋陸軍幼年学校

名古屋陸軍幼年学校について

名古屋陸軍幼年学校は、大日本帝国陸軍が将来の幹部候補生を育成するために設立した全寮制の教育機関です。当初は名古屋陸軍地方幼年学校として、愛知県名古屋市に設置されましたが、後に同県東春日井郡篠岡村（現在の小牧市）に移転しました。この学校は、幼少期から軍事教育を施すことで、規律正しく有能な将校を養成することを目的としていました。

設立と変遷

1896年（明治29年）に陸軍幼年学校条例が改正され、東京に陸軍中央幼年学校が設置されるとともに、その下級学校として名古屋陸軍地方幼年学校が誕生しました。同時期には、東京、仙台、大阪、広島、熊本にも同様の地方幼年学校が設立されました。

名古屋陸軍地方幼年学校では、約50名の生徒が13歳から16歳までの3年間、軍事教育を受けました。生徒の学費は、陸海軍士官の子息は半額、戦死者の遺児は免除とされていました。制服の襟には金星のマークが付けられていたため、「星の生徒」と呼ばれていました。卒業生は陸軍中央幼年学校に進み、さらに2年間の教育を受けた後、士官候補生として各部隊での勤務を経て陸軍士官学校へと進みました。

1920年（大正9年）に陸軍幼年学校令が改正され、名古屋陸軍幼年学校と改称されました。しかし、1922年のワシントン海軍軍縮条約の影響による軍縮の流れを受け、1923年（大正12年）に一度廃止されました。その後、跡地には名古屋拘置所が開設され、現在に至っています。

しかし、1930年代後半になると、中国での戦局拡大に伴い、陸軍幼年学校の必要性が再認識されました。1936年（昭和11年）に広島幼年学校が復活したのを皮切りに、仙台、熊本、そして1940年（昭和15年）には大阪と名古屋の幼年学校も復活しました。名古屋幼年学校は篠岡村（現在の小牧市下末）に新たな校舎を構え、生徒定員は50名でしたが、戦時中は増員されました。この再開後の幼年学校では、入校年齢が13歳から15歳に変わり、卒業後は陸軍予科士官学校へ無試験で進学できることになりました。

1940年（昭和15年）11月20日には、梨本宮守正王が訪問し、学校の施設が「観武台」と命名されました。しかし、太平洋戦争の敗戦に伴い、名古屋陸軍幼年学校は再び廃止され、解散しました。

現在

現在、跡地は中部管区警察学校となっていますが、幼年学校時代に建てられた観武台の碑が再建されており、当時の面影をわずかに残しています。

歴代校長

名古屋陸軍地方幼年学校

山本悌三郎 歩兵大尉：1897年5月1日 - 1902年4月1日
橘周太 歩兵少佐：1902年4月1日 -
田崎豊彦 歩兵少佐：1904年4月19日 -
大沢月峰 歩兵少佐：1904年11月21日 -
佐藤鶴松 歩兵少佐：1907年3月20日 - 1912年9月28日
汾陽光二 歩兵少佐：1912年9月28日 - 1916年1月21日
山田龍雄 歩兵少佐：1916年1月21日 - 1920年8月10日

名古屋陸軍幼年学校（第一次）

山田龍雄 少佐：1920年8月10日 - 1923年3月31日廃止

名古屋陸軍幼年学校（第二次）

毛利末広 大佐：1940年3月9日 -
鈴木鉄三 大佐：1941年10月6日 -
恵藤第四郎 大佐：1944年6月21日 -
人見順士 予備役少将：1945年4月6日 -

中途退学者と終戦時在学者

中途退学者には、作家の大杉栄がいます。

終戦時に在学していた生徒には、作家の加賀乙彦、学者の水島一也、脚本家の桂千穂、弁護士の中田直人、第18代航空幕僚長の大村平などがいます。

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
原剛・安岡昭男編『日本陸海軍事典コンパクト版（上）』新人物往来社、2003年。
野邑理栄子『陸軍幼年学校体制の研究』吉川弘文館、2006年。

関連項目

東京陸軍幼年学校
大阪陸軍幼年学校
熊本陸軍幼年学校
仙台陸軍幼年学校
広島陸軍幼年学校
陸軍士官学校 (日本)
* 陸軍大学校

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