名古屋電気鉄道デワ1形電車

名古屋電気鉄道デワ1形電車について

名古屋電気鉄道デワ1形電車は、1912年に名古屋電気鉄道によって製造された木造電動貨車で、同社が行っていた貨物輸送において重要な役割を果たしました。この電車は構造的に従来の貨車とは異なり、オープンデッキ構造や運転台を備えており、周囲の風景を楽しみながら運行が可能です。このため、多くの人々にとって思い出深いモデルとなっています。

構造

デワ1形は、梅鉢鉄工所で製造され、全長は8.36メートル、全幅は2.23メートルの4輪単車構造の木造有蓋車です。自重は10トン、荷重は6トンであり、当時の同型の貨車と比較すると、比較的重量級に分類されていました。基本的なデザインとして、両端部にはオープンデッキとベスチビュールと呼ばれる前面窓があり、前面には昇降ガラス窓が配置され、その下に前照灯が取り付けられています。車体の材質には、ケヤキ材、ヒバ板、アメリカ産の松材などが使用され、側面中央には貨物扉が設けられています。全体の外装は黒色でしっかりした造りが特徴的です。

主電動機には、イギリスのブリティッシュ・ウェスティングハウス製の2基の直流直巻電動機（50馬力）が搭載され、制御装置は同社製の直接制御器が使用されています。これにより、電動貨車としてのパフォーマンスを最大化し、当初から貨車牽引の能力を考慮して設計されていました。この電動機は、当時の500形電車でも使用されており、歯車比も統一されていました。台車はブリル製の単台車が装着され、制動装置にはアックレー製の手ブレーキが組み合わされています。集電装置はトロリーポールでしたが、後にパンタグラフに変更されることもありました。

歴史

名古屋電気鉄道は、市内線の運営を開始した際、初めは貨物輸送を行っていませんでした。しかし、郡部線（例えば、一宮線や犬山線、津島線）の建設を進めるうちに、新たな収入源として貨物輸送を模索するようになりました。1911年に提出された設計書では、客車15両、電動貨車12両が見込まれていましたが、最終的には電動客車40両と電動貨車35両が発注されました。開業時には、急いで製造された電動客車21両と10両の電動貨車が竣工しています。

当初、貨物輸送計画には市内線直通の構想も含まれており、名古屋市内の数ヵ所に貨物取扱所を設ける計画がありましたが、道路幅員などの理由で認可が得られず、最終的には構想を変更せざるを得ませんでした。貨物は郡部線ターミナルである押切町駅にて受け渡され、そこで荷車や馬車を使って市内へ運ばれる形になりました。

貨物輸送の成果は乏しく、予想を下回る輸送量によって、デワ1形電車の35両は早々に余剰車両となりました。しかし、1918年から始まった院線との連絡運輸の需要の高まりにより、余剰となった22両は電装解除されて、付随貨車に改造されました。これは、電装品と運転台の撤去、そして台車の交換を伴うものでした。その後、デワ1形は減少しつつも、他の貨車へと部品や台車が流用されていきました。

最終的に、太平洋戦争の影響で資材不足が生じ、必要な車両を確保するために、デワ1形も車両数調達の資材として使われることとなりました。デワ1形は1940年に形式消滅し、その後、新たな車両の製造が続けられる中、名古屋鉄道の歴史における一部として刻まれています。

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