向井忠勝

向井忠勝（むかい ただかつ）

生涯

向井忠勝は、天正10年（1582年）に徳川水軍の将・向井正綱の息子として生まれました。父の跡を継ぎ、徳川水軍の中核を担い、江戸幕府の初期における海軍力の発展に大きく貢献しました。

慶長6年（1601年）、徳川秀忠に仕え、父とは別に相模・上総国内で500石を与えられ、御召船奉行として下総国葛飾郡堀江（現在の千葉県浦安市）に陣屋を構えました。大坂冬の陣では、九鬼守隆、千賀信親、小浜光隆らと共に水軍の将として出陣。下福島村付近から出兵し、野田・福島の戦いでは大野治胤率いる豊臣水軍と激戦を繰り広げました。木津川付近では豊臣軍を圧倒し、大坂湾の制海権を確保する活躍を見せました。これらの功績により、慶長20年（1615年）に500石、元和3年（1617年）に2,000石を加増され、父の死後には遺領も継いで5,000石、寛永2年（1625年）には相模・上総両国で6,000石の大身旗本となりました。

忠勝は、2代将軍・徳川秀忠からの信頼が厚く、船での移動には必ず随行しました。父譲りの造船技術にも優れており、寛永9年（1632年）には3代将軍・徳川家光の命で、江戸幕府史上最大の安宅船「安宅丸」を建造しました。また、徳川家康が国際貿易港として開港した浦賀湊におけるスペイン貿易を統括し、スペイン商船の渡海朱印状を仲介するなど、国際貿易にも深く関わりました。

さらに、伊達政宗が支倉常長をヨーロッパに派遣した際には、建造された「サン・ファン・バウティスタ号」に公儀大工や御内衆を派遣し、航海の安全を祈願する札を届けさせました。

寛永18年（1641年）に死去。当初は上野寛永寺の支院本覚院に埋葬されましたが、後に向井将監正養によって江東区深川の陽岳寺に改葬されました。家督は次男の直宗が継ぎましたが、これは長男の正俊が父の勘気を被り高野山に蟄居していたためです。その後、直宗も早世したため、家督は五男の正方が継ぎました。忠勝は向井家で最初に将監を称し、以後11代にわたり、江戸幕府滅亡まで世襲されました。

屋敷

忠勝の本邸は、采地である相模国三浦郡三崎宝蔵山にありました。江戸の屋敷は、楓川と日本橋川が合流する東詰に位置し、船着場と水路を備えた角地という好立地でした。隣には次男・直宗の屋敷がありました。江戸の下屋敷は、新堀の中央区日本橋箱崎町にあり、将監番所は霊岸島八町掘にありました。この東側には船手組屋敷があり、江戸城を守護する役割を果たしていました。亀島川沿いの河岸は、「将監河岸」として明治時代末期まで正式な地名となっていました。

市指定重要文化財

2013年4月1日、神奈川県三浦市白石町の見桃寺墓地奥にある8基の石塔が、「向井将監一族石塔群」として市指定重要文化財に指定されました。

向井忠勝を題材にした作品

小説
隆慶一郎 『見知らぬ海へ』 講談社文庫、1990年 ISBN 4-06-185774-6
テレビドラマ
『破れ奉行』テレビ朝日系列、1977年　※史実に基づいたものではなく、架空の人物として登場

関連事項

新大橋
左近川
海運橋

外部リンク

陽岳寺

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