呉質

呉質（ご しつ）

呉質（177年 - 230年）は、後漢末期から三国時代の魏に仕えた政治家、文学者です。字は季重（きちょう）。兗州済陰郡鄄城県（えんしゅうさいいんぐんけんじょうけん）の出身です。曹操、曹丕に仕え、特に曹丕（文帝）の即位に大きく貢献しました。

生涯

呉質は、若い頃からその才能と学識によって知られていました。曹操に見出され、曹丕をはじめとする諸侯からも寵愛を受けました。曹丕と曹植による後継者争いが激化すると、呉質は兄弟の間をうまく立ち回りながら、最終的に曹丕の擁立に尽力します。その際、曹操の前で曹丕に嘘泣きをするよう進言し、曹操を感動させたという逸話が残っています。

曹丕が太子となると、司馬懿、陳羣、朱鑠と共に「太子四友」の一人に数えられ、厚い信頼を得ました。曹丕が皇帝に即位すると、呉質は北中郎将に任命され、列侯に採り立てられました。さらに、使持節・都督幽并二州諸軍事に任じられ、信都を治所としました。その後、仮節・都督河北諸軍事・振威将軍へと昇進し、河北地域の軍事を取り仕切る重責を担いました。

しかし、呉質は曹丕の寵愛を笠に着て、傲慢な振る舞いも目立ちました。宴席で曹真や朱鑠に無礼な発言をしたり、幽州刺史であった崔林が頭を下げなかったことを理由に、功績を挙げていたにも関わらず河間太守に降格させたりしたと伝えられています。

226年に曹丕が崩御すると、呉質は深く悲しみ、その死を悼む詩を送りました。太和年間に入朝した際、出身地の同郡の人々から軽視されていることに怒り、無礼な言葉を放ったため、同じく同郡出身だった董昭にたしなめられたという逸話も残っています。

230年、侍中に任命されますが、曹叡（明帝）に対し、陳羣を誹謗するような発言をしたため、周囲からは批判を受けました。同年、病没しました。

呉質が魏国内で疑われているという噂を聞きつけた呉の胡綜は、偽の降伏文書を作成し、呉質の謀反をでっち上げようとしました。しかし、その文書が出回ったときには、既に呉質は侍中に任命され中央に召喚されていたため、この策は失敗に終わりました。

死後、「醜侯」と諡されましたが、子の呉応が事実に反すると上奏したため、正元年間（254年 - 256年）に「威侯」と改められました。

人物

呉質は、優れた才能と学識を持ち、曹丕の側近として活躍しました。しかし、その性格には傲慢な面があり、周囲との軋轢を生むこともありました。彼の生涯は、功績と性格的な欠点が入り混じった複雑なものであったと言えるでしょう。

参考文献

* 『三国志』魏書 王粲伝注 引『魏略』

もう一度検索