胡綜

胡綜（こ そう）

胡綜（こ そう）は、中国三国時代の呉に仕えた政治家・武将であり、字は偉則（いそく）と名乗りました。豫州汝南郡固始県（現在の河南省信陽市固始県）の出身です。子に胡沖（こ ちゅう）がいます。

生涯

幼い頃に父親を亡くし、母親に従って江東に移り住みました。14歳になると、会稽太守であった孫策（そん さく）に見出され、門下循行に取り立てられます。そして、孫策の弟である孫権（そん けん）と共に学問を学びました。

孫策の死後、孫権によって金曹従事（きんそうじゅうじ）に任じられ、黄祖（こうそ）討伐の武功により鄂県県令（がくけんけんれい）となりました。孫権が車騎将軍（しゃきしょうぐん）となると、胡綜は将軍府の書部となり、是儀（ぜ ぎ）や徐詳（じょ しょう）と共に国政の中枢を司りました。

魏（ぎ）が呉を藩国とし、孫権が呉王（ごおう）に任ぜられると、是儀や徐詳らと共に亭侯（ていこう）に封ぜられました。劉備（りゅうび）を攻めるため白帝城（はくていじょう）を攻撃することになった際、徴兵を行い、右部督（うぶとく）として左部督に任じられた徐詳と共に戦役に参加しています。

黄武2年（223年）には、賀斉（が せい）と共に魏の晋宗（しんそう）を捕虜にした功績で建武中郎将（けんぶちゅうろうしょう）に就任しました。

黄龍元年（229年）、孫権が帝号を称し建業（けんぎょう）で正式に呉を建国すると、徐詳と共に侍中（じちゅう）となり都郷侯（とこうこう）として左右領軍（さゆうりょうぐん）を兼務しました。黄龍2年（230年）、魏の隠蕃（いんばん）が呉に投降しましたが、のちに隠蕃の謀反の計画が発覚した時の適切な評価と対応から、さらに偏将軍（へんしょうぐん）を拝し、左執法（さしつぽう）を兼務して訴訟行政を担当しました。なお、胡綜が偏将軍であった頃、朱桓（しゅかん）に命を狙われたというエピソードがあります。

公孫淵（こうそん えん）に対する使者派遣に関し、孫権と張昭（ちょう しょう）が対立した際には両者の仲介を行いました。

赤烏6年（243年）に亡くなりました。爵位は子の胡沖が継承しています。

人物評価

胡綜は文章作成に優れており、呉を賞賛する辞賦（じふ）を作ったほか、呉の行政文書や外交文書の作成を担当していました。

呉では、長官職にある者は両親の喪のために休職することを禁じられていましたが、実際には禁令は守られていませんでした。禁令について朝臣に諮った際には、胡綜は禁令を破った者を死刑にすべきであり、一人を処罰すれば見せしめになると上言しました。孫権が胡綜の意見に従った結果、呉ではこの禁令を破る者はいなくなったと言われています。

参考文献

* 陳寿、裴松之注『正史 三国志』、井波律子・今鷹真・小南一郎 訳・解説（ちくま学芸文庫全8巻、1992 - 93年）、※呉書は6・7・8巻、小南一郎訳。

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