陳羣

陳羣（ちん ぐん）

陳羣（ちん ぐん、生年不詳 - 青龍4年12月24日（237年2月7日））は、中国後漢末期から三国時代の魏に仕えた政治家であり、字は長文（ちょうぶん）。豫州潁川郡許昌県（現在の河南省許昌市建安区）の出身です。彼は、祖父の陳寔（ちんしょく）から将来を嘱望され、父の陳紀（ちんき）と共に名士として知られていました。

生涯

若き日

幼い頃から祖父の陳寔に将来を期待され、名士である孔融（こうゆう）にも才能を認められました。同郷の辛毗（しんぴ）・杜襲（としゅう）・趙儼（ちょうげん）と共に「辛陳杜趙」と称されるほど名声を集めました。

興平元年（194年）、豫州刺史となった劉備（りゅうび）に登用され、別駕（べつが）として仕えましたが、徐州領有を巡る劉備の判断を諫めました。しかし、受け入れられず、後に劉備が領地を失った際に、陳羣の言葉を用いなかったことを後悔したとされています。その後、茂才（ぼうさい）に推挙されましたが、父と共に徐州へ避難しました。

曹操に仕える

建安3年（198年）、曹操（そうそう）が呂布（りょふ）を滅ぼした際、曹操に招聘され、司空西曹掾属（しくうせいそうえんぞく）となりました。荀彧（じゅんいく）に推挙された人物の一人とも言われています。

曹操が王模（おうぼ）と周逵（しゅうき）を登用しようとした際、陳羣は彼らの道徳的な問題点を指摘し、反対しました。曹操は一旦は任用しましたが、後に彼らが罪を犯し処刑されたため、陳羣に謝罪しました。一方、陳羣が推挙した陳矯（ちんきょう）や戴乾（たいかん）は、後に魏の高官となり、国難に殉じるなど、その人物鑑識眼は高く評価されました。

蕭・酇・長平の県令を歴任した後、父の死により官を離れましたが、後に司徒掾（しとえん）として復職し、治書侍御史（じしょじぎょし）に任じられました。魏が建国されると、御史中丞（ぎょしちゅうじょう）に昇進しました。

曹操が肉刑の復活を議論した際、陳羣は死刑の減刑手段として肉刑を復活させることを提案しましたが、反対意見が多く見送られました。その後、侍中（じちゅう）となり、丞相東西曹掾（じょうしょうとうざいえん）を配下におきました。

建安22年（217年）に曹丕（そうひ）が魏の太子となると、司馬懿（しばい）・呉質（ごしつ）・朱鑠（しゅしゃく）と共に「四友」と称されました。曹丕は陳羣を深く敬い、顔回（がんかい）に準えて称えました。

魏の重臣として

延康元年（220年）、曹操の死後、曹丕（文帝）が王位を継ぐと、陳羣は昌武亭侯（しょうぶていこう）・尚書（しょうしょ）となり、禅譲に尽力しました。特に、九品官人法（きゅうひんかんじんほう）を建議・制定したことは、彼の最大の功績と言えるでしょう。

黄初年間（220年 - 226年）、曹丕が卞太后（べんたいごう）の両親に爵位を追贈しようとした際、「女性に爵位を与えるのは古代の典則ではない」と反対し、曹丕はこれを受け入れました。

尚書僕射（しょうしょぼくや）・侍中を経て、尚書令（しょうしょれい）・潁郷侯（えいごうこう）に昇進。曹丕の呉討伐に従軍し、帰還後は鎮軍大将軍（ちんぐんだいしょうぐん）・中護軍（ちゅうごぐん）・録尚書事（ろくしょうしょじ）に昇進しました。

曹丕の死後、曹叡（明帝）に後事を託され、曹叡の即位後には潁陰侯（えいいんこう）に昇進し、司空（しくう）に任じられました。

太和4年（230年）には、曹真（そうしん）の蜀漢征伐に反対しましたが、聞き入れられず、長雨により進軍が困難となり、最終的に帰還命令が出されました。

青龍4年（236年）に亡くなり、靖侯（せいこう）と諡（おくりな）されました。彼の死後、『名臣奏議』が編纂され、その密奏が明らかになると、人々の感嘆を呼びました。

人物

陳羣は、印相の鑑定法を広めた人物としても知られています。また、郭嘉（かくか）の不行跡を度々弾劾するなど、誠実な人柄であり、名誉と道義を重んじました。その高潔な人柄と高い声望は、多くの人々に賞賛されました。

評価

『三国志』の編者である陳寿（ちんじゅ）は、陳羣を「名誉と徳義により行動し、高潔な人柄と高い声望を持っていた」と評価しています。また、袁準（えんじゅん）は、陳羣を「仁愛の極致」と称えました。

陳羣は、魏の法制度の整備に大きく貢献し、特に九品官人法の制定は、後の人材登用制度に大きな影響を与えました。彼の功績と人柄は、後世に高く評価されています。

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