周布氏

周布氏（すふし）

周布氏は、石見国周布郷（現在の島根県浜田市の一部）を本拠とした武家です。そのルーツは、藤原北家の一族で、石見国の有力豪族であった御神本氏に遡ります。

周布氏の起こり

益田氏5代当主・益田兼季の子である兼定が、周布郷の地頭となり周布氏を名乗ったのが始まりとされています。兼定の弟たちもそれぞれ分家し、末元氏、丸茂氏、多根氏を称しました。

周布氏の初期の動向については諸説ありますが、貞応2年（1223年）の史料には、すでに「すふ知行」として那賀郡来原を領有していたことが記録されています。この「すふ」とは兼定のことと考えられています。来原は来原別府と呼ばれ、多根兼政の子である弥四郎盛家が地頭職を得て、その子孫は来原氏を称するようになりました。一方、兼定が治める周布郷・鳥居郷などの地頭職は、異母弟である兼政の子・時兼に譲られ、時兼は鳶巣城を本拠として周布氏歴代に受け継がれました。

鎌倉時代中期頃から、周布氏、三隅氏、福屋氏といった比較的早くから独立した庶流たちは、益田氏の本拠地から離れた地を領有していたこともあり、次第に益田惣領家とは別に独自の領主活動を行うようになります。これにより、益田氏を中心とした惣領制は綻びを見せ始めました。南北朝時代には、周布氏、三隅氏、福屋氏は南朝方につき、北朝方についた益田氏と対立しました。

戦国時代の周布氏

戦国時代に入ると、周布氏は地政学的な要因から、周防山口を拠点とする大大名・大内氏に従属するようになり、尼子氏についた益田氏と争いました。周布氏は大内氏を通じて朝鮮との貿易を行っていたことも知られています。大内氏滅亡後は、毛利氏に居城である鳶巣城を攻められ、その傘下に入りました。

周布元兼は、天正5年（1577年）の播磨上月城攻めの際、吉川元春の軍に属して討ち死にしました。その子・長次の時代に関ヶ原の戦いが起こり、西軍の総大将となった毛利輝元が減封処分を受け、安芸広島から長門萩に移封されると、長次もそれに従って萩に移りました。

江戸時代から幕末へ

長次の子・元真の時代には杉岡氏を称しましたが、孫の兼宣の代に再び周布氏に復しました。以後、明治維新に至るまで、周布氏は萩藩毛利氏の家臣として存続しました。

幕末には、分家の一族から周布政之助が現れました。政之助は藩主・毛利慶親に仕え、萩藩の財政再建などの藩政改革に取り組んだ村田清風の後を継ぎ、萩藩の革新政権を主導しました。しかし、禁門の変、四ヶ国連合艦隊の下関来襲、第一次長州征伐など、藩を存亡の危機に追い込んだ責任を痛感し、元治元年（1864年）9月に自刃しました。

江戸時代、周布氏の一族は、萩藩大組筆頭の本家（1,530石）をはじめとして、大組士に三家、その他に萩藩陪臣として阿川毛利氏と周布氏本家の家臣に庶子家が存在しました。

周布氏嫡流系図

益田兼季 - 兼定=兼政 - 時兼 - 義信 - 兼宗 - 兼長=兼氏 - 氏連=兼仲 - 兼宗 - 和兼 - 元兼 - 興兼 - 武兼 - 元兼 - 元盛=長次 - 元真 - 就里 - 兼宣

参考文献

岡部忠夫『萩藩諸家系譜』（復刻）マツノ書店、1999年1月。
オメガ社 編『地方別日本の名族』 9 中国編、新人物往来社、1989年。ISBN 9784404015440。
沼田頼輔『国立国会図書館デジタルコレクション 日本紋章学』明治書院、1926年3月。
山口県文書館 編『防長風土注進案』 第13巻 山口宰判 下（復刻）、マツノ書店、1983年。

関連項目

* 益田氏

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