周詒春

周詒春（しゅう いしゅん、1882年 - 1958年）は、中華民国の政治家、教育者、そして実業家として、激動の時代を生きた人物です。字は寄梅といい、安徽省徽州府休寧県（現在の黄山市休寧県）を原籍としています。

教育者としての足跡

周詒春は、私立上海聖ヨハネ書院を卒業後、1907年にアメリカへ留学し、イェール大学とウィスコンシン大学で教育学と心理学を修め、修士号を取得しました。1911年に帰国すると、清朝の留学生試験に合格し、文科進士の称号を得ます。その高い学識と国際的な視野は、後の彼の活躍を支える基盤となりました。

1912年、中華民国臨時政府が南京に成立すると、周詒春は外交部秘書に任命されます。同年秋には、公立北京清華学校（後の清華大学）の副校長兼教務長に就任し、教育者としてのキャリアを本格的にスタートさせました。翌年には校長に昇進し、清華学校の発展に大きく貢献しました。1915年には、母校である私立聖ヨハネ大学から文学博士の栄誉学位を授与されています。

1917年、清華学校の校長職を辞任した後、華洋義賬会の総幹事を務め、教育界における貢献を続けました。

政治家、実業家としての活動

1918年、周詒春は安福国会で参議院議員に当選し、政治家としての活動も開始します。1919年には、南北和議における北方代表団の秘書長として、和平交渉に尽力しました。

その後、周詒春は実業界にも進出し、北京中孚銀行の董事兼経理、天津仁立地氈公司の董事長、永利製造化学公司の顧問などを歴任しました。1923年には、北京政府の全国財政討論委員会秘書長に任命され、財政分野でも手腕を発揮しました。1925年には、中美文化教育基金保管委員会の常務董事、専任董事を務め、教育と文化の国際交流にも貢献しました。

1933年、周詒春は国民政府に招聘され、行政院華北戦区救済委員会の委員に任命されます。同年には、私立燕京大学の校長代理となり、再び教育の現場に戻りました。1936年には、国民政府実業部常務次長に任ぜられ、1937年には貴州省政府財政庁庁長に転任しています。

晩年

1945年、周詒春は農林部部長に抜擢され、翌年には最高経済委員会委員も兼任しました。1947年には衛生部部長に転じ、翌1948年には行政院政務委員も兼任しましたが、同年末に職を辞して香港へ移住しました。しかし、中華人民共和国が成立した後、1950年に内地へ戻り、1956年には中国人民政治協商会議全国委員会の特別代表として招聘されています。彼は、新しい中国の建設にも関わりました。

周詒春は、1958年8月に上海市で76歳で亡くなりました。彼の生涯は、中華民国の激動の歴史と密接に結びついており、教育、政治、実業の各分野で顕著な足跡を残しました。国際的な視野と幅広い知識を持ち合わせた彼の存在は、近代中国の発展に大きく貢献したといえるでしょう。

参考文献

徐友春主編『民国人物大辞典 増訂版』河北人民出版社、2007年。ISBN 978-7-202-03014-1。
劉寿林ほか編『民国職官年表』中華書局、1995年。ISBN 7-101-01320-1。

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