和帝 (漢)

和帝（わてい）：後漢王朝中興の光と影

和帝（79年 - 106年）は、後漢王朝の第4代皇帝であり、その治世は外戚の排除と文化・外征面での成果という光の側面と、宦官の台頭という影の側面を持ち合わせていました。

幼少からの苦難と権力掌握

章帝の四男として生まれた和帝でしたが、生母である梁貴人は竇氏一族の陰謀によって命を落としました。幼くして皇太子に立てられたものの、即位当初は養母である竇太后とその一族が政治の実権を握り、和帝は傀儡同然の存在でした。しかし、成長するにつれて竇氏一族の専横に対する不満を募らせ、実権奪還を決意します。

和帝は、宦官の鄭衆を密かに腹心とし、竇氏誅滅の計画を進めます。鄭衆は、その忠誠心と行動力によって和帝の信頼に応え、永元4年（92年）に竇憲を宮廷におびき出し、実権を剥奪することに成功しました。これにより、和帝は長年の苦難から脱し、自らの手で政治を行うことができるようになったのです。

宦官の台頭と外戚の復活

竇氏一族の排除に貢献した鄭衆は、その功績によって鄲郷侯に封じられ、大長秋の官を授けられました。和帝はその後も鄭衆を重用し続けたため、宦官が政治に深く関わるようになります。鄭衆自身は有能で私欲のない人物でしたが、彼以降の宦官は無能で貪欲な者が多く、彼らの跳梁によって政治の腐敗が深刻化しました。

また、和帝が若くして崩御すると、幼い皇帝を補佐するために、和帝の皇后であった鄧氏の一族が外戚として政治の実権を握るようになります。以降の後漢王朝では、幼い皇帝が続くたびに外戚と宦官の対立が激化し、政治は混乱を極めることになります。

文化・外征面での功績

和帝の時代は、外征面においては後漢王朝が最も栄えた時期であり、西域都護の班超の活躍によって、西域の50余国が後漢に服属しました。しかし、班超が中央に召還された後は、後漢の西域における影響力は急速に衰退しました。匈奴との戦いも、匈奴の内紛に助けられ、有利に進めることができました。

文化面では、班固・班昭兄妹による『漢書』の編纂（班固の死後、班昭が完成）や、蔡倫による製紙法の改良が挙げられます。蔡倫による製紙法の改良は、その後の文化の発展に大きく貢献しました。

宗室

正室：陰皇后（廃） - 陰識の曾孫娘
継室：鄧綏（和熹皇后） - 鄧禹の子の鄧訓の娘
側室：周貴人
側室：馮貴人

子女

長男：平原懐王 劉勝
次男：劉隆（殤帝） - 第5代皇帝
長女：修武公主 劉保
次女：共邑公主 劉成
三女：臨潁公主 劉利 - 即墨侯賈建に嫁ぐ
四女：聞喜公主 劉興

和帝の治世は、外戚の排除と文化・外征面での成果という光の側面と、宦官の台頭という影の側面を持ち合わせていました。彼の死後、後漢王朝は外戚と宦官の対立によって衰退の一途をたどることになります。

もう一度検索