鄧禹

鄧禹（とう う）

鄧禹（2年 - 58年）は、後漢の初期に活躍した武将であり、字は仲華。南陽郡新野県（現在の河南省南陽市新野県）の出身です。後漢を建国した光武帝・劉秀の功臣として知られ、「雲台二十八将」の筆頭に序せられています。

生涯

若き日と劉秀との出会い

13歳にして既に『詩経』を諳んじるほどの学識を持ち、数年間長安で学びました。この頃、同じく長安に遊学していた劉秀と親交を深めます。劉玄が挙兵した際、鄧禹を推挙する声が多数ありましたが、彼はすぐには仕官しませんでした。

劉秀への合流と河北平定

更始元年（23年）、劉秀が河北に派遣されると、鄧禹は劉秀を追って鄴で合流し、その才能を認められ重用されるようになります。河北での戦いでは、精鋭数千人を率いて王郎の軍を破り、農民反乱軍である銅馬にも勝利を重ね、河北の平定に大きく貢献しました。

関中侵攻と失脚

更始2年（24年）、劉秀は関中を併合しようと企図し、鄧禹を前将軍に任じて2万の兵を与え関中侵攻を命じました。河東郡では、劉玄の将軍である樊参や王匡らの軍を破り、支配を確立。劉秀が即位すると、鄧禹は大司徒に任じられ、酇侯に封ぜられます。

関中は赤眉の乱によって荒廃しており、鄧禹の軍は規律を厳守したため、民衆からの支持を集めました。しかし、延岑との戦いで敗北し、劉嘉の部将を斬ったことが反乱を招き、赤眉軍との戦いでも敗北。この失態により、馮異と交代させられることになります。

再起と文治政治への移行

建武3年（27年）、東へ帰還する途中で馮異軍と合流しますが、赤眉との戦いで再び大敗。しかし、その後は劉秀の元に合流し、大司徒の印綬を返上。数ヶ月後には右将軍に任じられます。

建武4年（28年）には延岑を破り、その残党を降伏させました。建武13年（37年）には、天下が平定された功績により高密侯に封じられます。劉秀が文治政治に転換すると、賈復と共に右将軍を辞し、劉秀の意向に従いました。晩年は明帝の太傅を務め、57歳で亡くなりました。

人物像と逸話

鄧禹は、劉秀に「先生が来たのは、私に仕えたいからか？」と問われた際、「明公が天下に威徳を広め、私はわずかな功を立てて史書に名を残したいだけです」と答え、劉秀を笑わせたという逸話が残っています。このやり取りから、二人の親密な関係が窺えます。

劉秀は鄧禹に人選を相談することが多く、彼が推薦した人物は皆有能であったため、劉秀は鄧禹の人物を見抜く才能を高く評価していました。鄧禹は教養と篤行を備え、親孝行であり、権勢や財産を求めることなく、子の教育に力を注ぎました。その人柄は多くの人々に慕われ、劉秀からの信頼も厚かったとされています。

子孫

鄧禹の孫には鄧騭がおり、孫娘の鄧綏は和帝の皇后、玄孫娘の鄧猛女は桓帝の皇后となっています。また、末裔には三国時代の蜀漢の武将である鄧芝がいます。

参考文献

范曄著、『後漢書』
中央研究院・歴史語言研究所「漢籍電子文献資料庫」
* 岩波書店『[後漢]]書〈第3冊〉列伝(1) 巻一〜巻十二』2002/5/29　[[范曄], 吉川忠夫(著)

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