和歌浦天満宮

和歌浦天満宮は、和歌山県和歌山市和歌浦西に鎮座する神社で、法人としての名称は「天満神社」です。和歌浦天神山の中腹に位置し、菅原道真公を祀り、和歌浦一帯の氏神として地域の人々から深く崇敬されています。学問の神様を祀ることから、毎年多くの受験生が合格祈願に訪れます。また、和歌浦天満宮は日本三菅廟の一つとしても知られています。

歴史

菅原道真公は、昌泰の変で失脚した後、大宰府へ左遷される途中で、海上の風波を避けるために和歌浦に停泊しました。その際、現在の和歌浦天満宮が鎮座する天神山から和歌浦の景色を眺め、二首の歌を詠んだと伝えられています。

その後、村上天皇の康保年間（964年～968年）に、参議橘直幹が太宰府からの帰京途中に和歌浦に立ち寄り、この地に神殿を建立し、道真公の神霊を祀ったのが和歌浦天満宮の始まりとされています。

また、道真公が和歌浦に立ち寄った際、敷物がなかったため、漁師が船の艫綱を円座として提供したという逸話から、和歌浦天満宮は「綱敷天神」とも呼ばれています。同様の逸話は、神戸市須磨区の綱敷天満宮にも伝わっています。道真公が須磨と和歌浦の両方に立ち寄ったとは考えにくいですが、いずれが道真公の一行が通った正確なルートかは不明です。

寛治4年（1090年）には、白河法皇が熊野三山への行幸の際に和歌浦天満宮に参詣し、菊花紋章の御幕を奉納しました。以後、和歌浦天満宮では、梅花とともに菊花を社紋として用いるようになりました。

天正13年（1585年）には、羽柴秀吉による紀州征伐によって社殿が焼失しますが、後に和歌山城代の桑山重晴によって復興され、和歌山城主の浅野幸長によって本格的に再建されました。浅野幸長は慶長9年（1604年）から同11年（1606年）にかけて、天神山の中腹を切り開いて社地を造成し、本殿、唐門、拝殿、楼門、東西回廊などを再建しました。これらの建築や彫刻には、平内吉政とその子で後に江戸幕府御大工棟梁となった平内政信が携わっています。本殿奥や楼門前面の石垣もこの時に造られました。

全国に天満宮と称する神社は数多くありますが、江戸時代の朱子学者で徳川家康のブレーンも務めた林羅山は、元和7年（1621年）に和歌浦天満宮を訪れた際、太宰府天満宮、北野[[天満宮]]と並ぶ由緒ある神社で、日本の三菅廟の一つであると述べています。また、同年には和歌浦天満宮の東に紀州東照宮が建立されています。

寛文4年（1664年）には、紀州藩主徳川頼宣から25石が寄進されました。

江戸時代を通じて、社家である安田能登守が天満宮と東照宮の両方の社官として明治維新まで奉仕しました。

和歌浦天満宮を含む一帯は、国指定史跡・名勝の和歌浦に指定されています。

祭神

主祭神は菅原道真公です。

境内

境内には、以下の建物や社があります。

本殿（重要文化財）：慶長11年（1606年）に浅野幸長によって再建されました。桁行五間・梁間二間の入母屋造、檜皮葺きで、蟇股には動物や草花の彫刻が施され、建物全体が極彩色で彩られています。
唐門
筆塚
社務所
回廊
楼門（重要文化財）：慶長10年（1605年）に浅野幸長によって再建されました。入母屋造の本瓦葺きで、滴水瓦としては初期の例です。軒は二軒扇垂木で、禅宗様を取り入れています。一間一戸門としては日本最大級の門です。
摂末社
多賀神社：本殿（重要文化財）は慶長年間（1596年～1615年）に建立されました。
天照皇太神宮豊受大神宮：本殿（重要文化財）は慶長年間（1596年～1615年）に建立されました。
白山比賣神社
白太夫神社
鹿島神社・香取神社
春日神社
柿本神社
神集神社
八幡神社
産霊神社
天穂日神社
三宝竃神社
住吉神社
高富稲荷神社
白藤龍王・白高大神
白鳥神社

文化財

重要文化財
天満神社本殿
天満神社楼門
天満神社 2棟
末社多賀神社本殿
末社天照皇太神宮豊受大神宮本殿
国指定史跡・名勝
和歌浦 天満神社境内地：国指定史跡・名勝の和歌浦に、和歌浦天満宮の境内地が含まれています。

祭礼

初天神：1月25日
* 筆供養祭：8月20日。「筆塚」に使い古しの筆を奉納し、書道の上達を祈ります。

所在地

〒641-0024 和歌山県和歌山市和歌浦西2丁目1-24

交通

南海和歌山市駅またはJR和歌山駅から和歌山バスの雑賀崎方面行き（雑賀崎循環バス）または新和歌浦行きで約25分、権現前停留所下車、徒歩約5分。

周辺

和歌浦、雑賀崎、番所庭園、新和歌浦、紀州東照宮、玉津島神社、不老橋、片男波海岸、養翠園、塩竈神社、紀三井寺（護国院）などが周辺にあります。

外部リンク

和歌浦天満宮

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