和解契約

和解契約（1647年）

17世紀のイングランドは、王権と議会の対立が激化し、清教徒革命（イングランド内戦）という動乱期を迎えていました。第一次イングランド内戦で議会派に敗北したチャールズ1世は、ハンプトン・コート宮殿に幽閉されていましたが、自身の復権を諦めていませんでした。

1647年11月、チャールズ1世は幽閉を脱出し、ワイト島に到着。そこで、スコットランド国民盟約（盟約派）との間で秘密裏に交渉を開始しました。盟約派は、かつては議会派と同盟しチャールズ1世と敵対していましたが、長老派教会を支持する彼らは、独立派の台頭に不満を抱き、議会派との関係が悪化していました。この状況を利用し、ハミルトン公爵ジェイムズ・ハミルトンがチャールズ1世との交渉を主導し、同年12月27日に「和解契約」が締結されました。

和解契約の内容

この契約は、スコットランド側の宗教的な要求が盛り込まれ、イングランド国内に長老派教会を試験的に3年間導入すること、独立派などの異端を抑圧することなどが約束されました。見返りとして、スコットランドはチャールズ1世の復権を支援することになりました。また、議会が国王との協議を拒んだ場合、スコットランド軍が武力を行使してでも国王を復権させることが明記されました。

翌1648年3月、スコットランド議会は和解契約を採択しましたが、国内には反対派も多く、スコットランドは分裂状態に陥りました。ハミルトン公は、盟約派の穏健派と一部の王党派を率いてエンゲージャーズを結成し、イングランドへ侵攻を開始。これにより、議会派はチャールズ1世との交渉を打ち切り、第二次イングランド内戦が勃発しました。

第二次イングランド内戦

第二次内戦では、イングランド各地で王党派が蜂起しましたが、議会軍（ニューモデル軍）の司令官トーマス・フェアファクスと副司令官オリバー・クロムウェルによって鎮圧されました。ハミルトン公率いるスコットランド軍も、プレストンの戦いでクロムウェルに大敗し、ハミルトン公は処刑されました。こうして、第二次内戦は短期間で終結しました。

孤立したチャールズ1世は1649年1月に処刑され、イングランドでは共和国が成立しました。しかし、スコットランドはこれに反発し、両国は再び戦争状態に突入しました（第三次イングランド内戦）。

忠誠契約（1650年）

イングランド共和国は、1650年1月に、国内に住む18歳以上の全男性に対し、共和国への忠誠を誓約するよう求めました。これが「忠誠契約」です。この契約は、国王も貴族院も存在しない共和国に対する忠誠を誓わせるもので、国内の安定を図るための措置でした。

この忠誠契約は、国民から強制的に忠誠を求める手法だったため、大きな論争を巻き起こしました（誓約論争）。

忠誠契約のその後

クロムウェルは、国内の反発を抑えながら、第三次イングランド内戦に出陣しました。しかし、忠誠契約に対する国民の不満は根強く、1660年に長期議会で廃止されました。

まとめ

和解契約と忠誠契約は、どちらもイングランド内戦という激動の時代に生まれた契約であり、それぞれの契約は、当時の政治状況と人々の心情を色濃く反映しています。

和解契約は、王党派とスコットランド盟約派の思惑が一致した結果であり、第二次内戦の引き金となりました。一方、忠誠契約は、共和国の安定を図るためのものでしたが、その強引な手法は国民の反発を招き、結果的に廃止されました。

これらの契約は、17世紀のイングランドの政治変動を理解する上で、非常に重要な歴史的出来事と言えるでしょう。


参考文献

田村秀夫編『クロムウェルとイギリス革命』聖学院大学出版会、1999年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
塚田富治『近代イギリス政治家列伝 かれらは我らの同時代人』みすず書房、2001年。
清水雅夫『王冠のないイギリス王 オリバー・クロムウェル―ピューリタン革命史』リーベル出版、2007年。

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