和賀氏

和賀氏について

和賀氏（わがし）は、日本の中世に存在した氏族で、主に鎌倉時代から戦国時代にかけて活躍しました。彼らの本拠地は、現在の岩手県北上市周辺にあたる陸奥国和賀郡で、地域の政治的な影響力を持っていました。和賀氏の出自や系譜については多くの伝承が残されていますが、特に『奥南落穂集』や『源姓和賀系図』に詳しく記されています。

出自と系譜

和賀氏の遠祖は、源頼朝に遡るという説があります。また、多田式部大輔忠明が建久2年（1191年）に宮城県刈田郡から更木梅ヶ沢に移り、のちに二子飛勢森へ移ったとされます。一方で、和賀氏の祖先に関する異なる伝承も存在し、鬼柳氏の『鬼柳文書』によれば、和賀氏は小野姓中条氏の系統で、鎌倉時代の中条義勝の次男・成季から始まるとされます。成季は和田義盛の養子となり、陸奥刈田郡で地頭を務め、以後和賀氏に改姓しました。

南北朝時代には、和賀氏は不穏な動きがあり、鬼柳氏などとともに北朝方に転じ、南朝方の須々孫氏と敵対しました。これにより、和賀氏内部でも分派が生じました。応永8年（1401年）には和賀下総入道時義が和賀一族の権利を認められ、和賀惣領家の本拠は二子城に置かれました。ここから、和賀氏は地方大名としての地位を保ち続けます。

和賀の大乱

しかし、永享7年（1435年）には、和賀惣領家と他の一族との間での確執が表面化し、和賀の大乱が発生しました。この争いは南部氏や葛西氏を巻き込む大規模な衝突に発展しました。最終的には、大乱の影響により和賀氏は飛地領を失い、内部の統一も損なわれました。後に、戦国時代には和賀義勝が稗貫氏の家臣となり、彼の子供が稗貫家を継ぐなど、和賀氏の影響力は変動していきました。

対豊臣秀吉とその後

天正18年（1590年）、和賀氏は小田原の陣に参加しなかったために領土を失う結果となりました。その後、和賀郡は豊臣秀吉の直轄地となり、和賀氏の勢力は衰退していきます。同年秋には、和賀義忠を中心とした蜂起が起こりますが、これも敗北に終わります。翌年には南部氏がその地域を支配することとなり、和賀氏の名は次第に歴史の裏側へと消えていきました。

様々な庶家

和賀氏には庶家が存在し、特に鬼柳氏、須々孫氏、黒沢尻氏、江釣子氏、大釜氏などが挙げられます。鬼柳氏は、和賀氏宗家の庶子としてその地を治め、後に和賀郡の惣領頭となっています。須々孫氏も和賀氏の一族でありながら、南北朝の動乱期には南朝側に付くなどし、結果的に宗家の影響下に入ることとなりました。

これらの庶家は、時の経過とともに互いに関係を持ちながらも、それぞれの運命を辿ることとなります。和賀氏の歴史は、単なる一族の興亡にとどまらず、当時の日本における政治的な力関係や地域の歴史に深く関係しています。

まとめ

和賀氏は、歴史の中で多くの波乱を経ながらも、地域社会に深い影響を及ぼした氏族です。その出自や血統、当時の政治的背景を紐解くことで、彼らの存在がどのように地域に根付いていったのかを理解することができます。彼らの物語は、単なる戦国時代の一幕だけにとどまらず、今もなお、岩手県の歴史を語る重要な要素となっているのです。

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