稗貫氏

稗貫氏の歴史とその支配

稗貫氏（ひえぬきし）は、岩手県の陸奥国稗貫郡を支配した戦国期の豪族で、その起源は平安時代にまで遡ります。稗貫氏の始まりは、源頼朝に仕えていた点にあります。彼らは奥州合戦で勝利し、北上川流域の稗貫郡を与えられたとされます。

出自

稗貫氏の家系は、伊達氏の始祖である伊達朝宗の四男、または三男である伊達為重に始まるとされています。彼は建久8年（1197年）に稗貫郡に下向し、小瀬川城を構え、ここから稗貫為重と名乗るようになりました。この情報は『伊達世臣家譜』によるものです。

南部藩側の文献によると、稗貫氏の起源については様々な説が存在します。一般的には藤原北家の流れを汲むとされていますが、その具体的な時期や根拠については不明点が多いのが現状です。他の記録物では、稗貫氏が藤原流中条家の分流とされていることもあります。近年では中条氏が出自であるとの説も有力視されています。

沿革

南北朝時代には、南朝方としての活動が見られますが、北畠顕家の死後、北朝方に与するようになります。この後、南部政長に攻められ、興国2年（1341年）には壊滅的な打撃を受けて衰退しました。また、南北朝の時代が終わっても、南部氏との抗争は続き、永享7年（1435年）の和賀の大乱では猛攻を受けますが、結果として南部氏の支持を受けて和睦を結びました。

江戸時代には、奥州探題大崎家の傘下に入り、その後もいくつかの戦乱を経て、徐々にその力を失ってゆきました。天文24年（1555年）には稗貫輝時が上洛し、将軍足利義輝に黄金を献上、偏諱を受けるなど、権威を示しましたが、戦国期には他家との抗争に苦しんでいました。

戦国時代の影響

稗貫氏は、戦国時代の中で他の勢力との抗争が多く、統一的な支配を確立することができず、国人領主としての地位が続きました。特に、南下政策を取る三戸南部氏に対して抵抗を試みるも、大きな戦果を上げるに至らず、確固たる大名としての成長は見られませんでした。

16世紀には、稗貫氏は和賀氏と連携し、高水寺斯波氏に対して衝突を重ねました。これにより、戦闘は続きましたが、まもなく南部氏が再び勢力を取り戻し、稗貫氏は徐々にその権力を失っていきました。天正16年（1588年）には、南部信直の軍が高水寺斯波氏を攻撃、結果として高水寺斯波氏が滅亡することになります。

終焉

稗貫氏の家系は、養子当主が多数を占め、他家の介入がその衰退を招いた要因とも考えられています。最後の当主である稗貫広忠は、豊臣秀吉の奥州仕置により所領を没収され、稗貫氏は正式に滅亡を迎えます。さらには、彼自身が乱を起こし、最終的には戦死に至ります。広忠の死後、彼の娘は南部信直に見初められるものの、稗貫家の再興は果たされることはありませんでした。

まとめ

稗貫氏は多くの戦乱を経ながらも、豪族としての地位を保持しようと尽力しました。その歴史や系譜は非常に複雑で、今後の研究によってその実態が明らかになることが期待されています。歴史的な背景に基づく具体的な資料が求められる中、稗貫氏の存在は、岩手県の歴史において重要な役割を果たしました。

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