三善康信

三善康信とは

三善康信（みよし の やすのぶ）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した公家です。保延6年（1140年）に生まれ、承久3年8月9日（1221年8月27日）に亡くなりました。三善康光または三善康久の子とされています。鎌倉幕府の初代問注所執事であり、入道後の法名は善信（ぜんしん）です。

生涯

元々、三善氏は太政官の書記官役を世襲する下級貴族で、算道（数学や暦学）の家柄でした。しかし、康信の母が源頼朝の乳母の妹であったという縁から、康信は流人として伊豆にいた頼朝に、京都の情勢を月に3度も伝えていました。治承4年（1180年）5月に以仁王が挙兵すると、その2ヶ月後、康信は頼朝に使者を送り、諸国で源氏追討の計画があることを伝え、奥州へ逃れるように促しました。この行動は、頼朝の挙兵を大きく後押ししたと言われています（『吾妻鏡』）。

元暦元年（1184年）4月、康信は頼朝によって鎌倉に呼ばれ、鶴岡八幡宮の廻廊で対面しました。そこで、康信は鎌倉に住んで武家の政務を補佐するように依頼され、これを受け入れました。この時、康信は中宮大夫属入道善信と呼ばれていました。同年10月には、貴族の家政事務を司る役所である公文所が新築され、大江広元が長官に、康信は初代問注所執事として裁判事務の責任者となりました。

頼朝の死後、2代将軍・源頼家を補佐する御家人による十三人の合議制にも参加しました。承久3年（1221年）の承久の乱の際には、病身でありながら会議に参加し、大江広元の即時出兵論を支持しました。同年、承久の乱後に亡くなりました。

経歴

康信の経歴は以下の通りです。

時期不詳：従八位上、治部少録
時期不詳：正六位上
平治2年（1160年）1月27日：右少史
時期不詳：左大史
応保2年（1162年）2月19日：兼中宮少属（中宮・藤原育子）。10月28日：従五位下、中宮少属如元（称中宮大夫属）
承安2年（1172年）2月10日：皇后宮少属（皇后・藤原育子、平徳子中宮立后）
承安3年（1173年）8月15日：止皇后宮少属（皇后藤原育子崩御）
治承元年（1177年）12月3日：見典薬大夫
治承5年（1181年）閏2月：出家?（法名・善信）。11月18日：見蔵人五位出納
寿永3年（1183年）4月14日：鎌倉下向
元暦元年（1184年）10月20日：問注所執事
元暦2年（1185年）1月27日：見蔵人五位出納
建久2年（1191年）1月15日：問注所執事留任
承久3年（1221年）1月6日：辞問注所執事。8月9日：卒去

系譜

父：三善康光または三善康久
母：源頼朝の乳母の妹
弟：三善康清
生母不詳の子女
男子：三善康俊（町野氏、問註所氏祖）
男子：三善行倫
男子：三善康継
男子：三善康連（三善流太田氏、椙杜氏祖）
女子：中原師重室

関連作品

三善康信は、以下のテレビドラマで描かれています。

草燃える（1979年、NHK大河ドラマ） - 演：石濱朗
義経（2005年、NHK大河ドラマ） - 演：五代高之
鎌倉殿の13人（2022年、NHK大河ドラマ） - 演：小林隆

参考文献

三島義教『初代問注所執事三善康信』新風書房、2000年。ISBN 4882694638。
八代国治『吾妻鏡の研究』（明世堂書店　初版1913年　1941年復刊）
五味文彦『増補吾妻鏡の方法：事実と神話にみる中世』吉川弘文館、2000年。
永井晋『官史補任』続群書類従完成会、1998年。

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