三善氏

三善氏について

三善氏（みよしし）は、古代日本において重要な役割を果たした氏族です。そのルーツは渡来人にあり、百済系と漢族系の二つの系統が存在します。それぞれの系統は、歴史の中で異なる発展を遂げましたが、後世には両者が結びつけられることもありました。以下に、それぞれの系統の詳細と、関連する歴史的な出来事について解説します。

百済系三善氏

百済系の三善氏は、『新撰姓氏録』によると、百済の速古大王の子孫であり、最初は錦部首（にしきべのおびと）、後に錦部連（にしきべのむらじ）を名乗りました。桓武天皇の時代には、錦部姉継（にしきべのあねつぐ）とその弟妹が後宮に仕えました。延暦年間（782年～806年）には、その一族が三善宿禰（みよしのすくね）の姓を授けられました。醍醐天皇の時代には、三善清行（みよしのきよゆき）が大学頭（だいがくのかみ）・文章博士（もんじょうはかせ）として活躍し、参議にまで昇進しました。また、延喜3年（903年）頃には、姓を宿禰から朝臣（あそん）に改めました。三善清行の子には、文章博士の文江（ふみえ）や式部少輔の文明（ぶんめい）、僧侶の浄蔵（じょうぞう）・日蔵（にちぞう）などが知られています。しかし、文明の子である道統（みちむね）が文章博士になった後、この系統は歴史から姿を消しました。

漢族系三善氏

一方、漢族系の三善氏は、『類聚符宣抄』によると、漢の東海王の子孫である波能志（はのし）を祖とし、最初は錦部村首（にしきべのむらのおびと）、後に錦宿禰（にしきのすくね）を名乗りました。貞元2年（977年）頃、三善朝臣（みよしのあそん）の姓を授けられ、その一人である三善茂明（みよししげあきら）は主税頭（しゅぜいのかみ）兼算博士（さんばかせ）に就任し、子孫は代々算博士を継ぎました。茂明の孫である三善為長（みよしためなが）は、越中国出身の門人、射水為康（いずみためやす）を養子に迎えました。為康は、算道と紀伝道に通じた学者であり、多くの著作を残しました。その子孫である三善長衡（みよしながひら）以降、代々西園寺家の家司を務めました。また、地下官人の今小路家も、この系統の子孫とされています。

三善氏の別系統と系譜の混乱

鎌倉幕府の初代問注所執事となった三善康信（みよしやすのぶ）も、この漢族系三善氏の一族とされています。彼の子孫からは、町野氏、太田氏、飯尾氏、布施氏などが現れ、鎌倉幕府の引付衆や室町幕府の奉行衆として活躍しました。

歴史的な史料からは、紀伝道を世襲した三善氏と算道を世襲した三善氏が別系統であったことが明らかになっています。しかし、後年、算道を世襲した三善氏の子孫は、自己の学識の由来を高く見せるために、高名な学者である三善清行と結びつけようとする動きがありました。その結果、三善清行の旧姓である錦部首を名乗った錦良助（にしきよしのすけ）を、清行の子とし、その子である錦連行（にしきつらゆき）を三善茂明の父とする系図が作成されました。しかし、錦連行の実在性は確認されておらず、錦良助と三善清行・三善茂明との血縁関係も不明です。このため、三善茂明が清行の曾孫であるという系譜は事実ではないと考えられています。

また、三善康信が為康の血縁であることはほぼ確実ですが、系譜上、為康の子であり康信の父とされる三善康光（やすみつ）の詳細については不明であり、為康と康信が具体的にどのような血縁関係にあったのかは定かではありません。

その他の三善氏

石見国邑智郡吾江庄（後の吾郷村）から発祥した吾郷（吾江）氏は、三善氏の流れを汲むとされています。このことから、三善氏の広がりと影響力が窺えます。

参考文献

『新撰姓氏録』
『類聚符宣抄』
『諸家系図纂』

関連項目

諸蕃
吾郷（吾江）氏

外部リンク

ホームページ 『 吾郷一族のルーツ 』

もう一度検索