善知鳥峠

善知鳥峠（うとうとうげ）

長野県塩尻市に位置する善知鳥峠は、標高889mの峠です。かつては三州街道が通り、現在は国道153号がこの峠を越えています。地理的には、霧訪山断層上に位置し、北側（塩尻側）は急峻な地形、南側（辰野側）は比較的緩やかな地形となっています。峠の直下には、中央本線の塩尻駅と小野駅を結ぶ「善知鳥トンネル」が通っています。

地理的特徴

善知鳥峠は、中央分水嶺の峠の一つであり、降った雨が南北に分かれて流れるという特徴を持ちます。峠の南側に降った雨は、伊那谷を流れ天竜川へと注ぎ、太平洋に流れます。一方、北側に降った雨は、松本盆地を潤し犀川に合流、信濃川（千曲川）を経て日本海へと流れていきます。峠の頂上付近には、分水嶺公園が整備されており、善知鳥峠の由来を記した石碑が設置されています。

歴史

この峠は、古くから歴史の舞台となってきました。貞和4年（1349年）から翌年にかけて、信濃守護の小笠原政長（北朝方）と諏訪直頼（南朝方）が付近で合戦を繰り広げました。また、天文17年（1548年）には、武田晴信と小笠原長時が戦った塩尻峠の戦いにおいても、この一帯が戦場になったとされています。

近世においては、国道153号の北側部分には登坂車線が設置されていますが、1971年の道路改良前は、急斜面に31ものカーブが連続する難所でした。長野自動車道が開通するまでは、名古屋方面と松本・長野を結ぶ重要な交通の要衝でした。

1990年代までは、峠の頂上にウルトラマンのマスコットを掲げたドライブインが存在しましたが、長野自動車道の開通などによる交通量の減少に伴い閉鎖されました。その後、建物は2001年1月27日の大雪により倒壊しました。

名称の由来

善知鳥峠の名前の由来には、いくつかの説があります。一つは、地元に伝わる善知鳥（ウトウ）と猟師の民話に基づいているというものです。もう一つは、北側の斜面が急峻で、かつて堀切場があり、そこから空洞（うとんぼ）が由来となったという説もあります。

また、能の大家である世阿弥が作ったとされる謡曲「善知鳥」では、この峠の名前の由来となったとされる出来事の後日談が描かれています。この謡曲の舞台となっているのは、青森県青森市の中心部にある善知鳥神社（青森市＝旧善知鳥村の発祥の地とされる）であり、この地には、善知鳥にまつわる伝説が残っています。

関連情報

日本の峠一覧
善知鳥（能）
善知鳥神社
善知安方忠義伝

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