小笠原長時

小笠原長時とは

小笠原長時（おがさわら ながとき）は、戦国時代の武将で、信濃国守護であり戦国大名です。信濃小笠原氏の当主であり、信濃林城主としても知られています。小笠原長棟の長男として生まれ、信濃四大将の一人にも数えられています。

生涯

1526年、13歳で元服した長時は、1541年頃に父の出家に伴い家督を継承しました。しかし、その頃から信濃は隣国甲斐の武田氏による侵攻に脅かされるようになります。1545年、武田晴信（後の信玄）が伊那郡へ侵攻すると、長時は龍ヶ崎城で武田軍に対抗しますが、板垣信方の軍勢に敗れました。長時は武勇に優れた武将でしたが、部下を統率する能力には欠けていたとされています。

その後も武田氏の勢いは止まらず、1548年には村上義清らと諏訪郡へ侵攻しますが、塩尻峠の戦いで再び敗北を喫しました。1550年には本拠地の林城も失い、信濃小笠原氏は没落しました。没落後、長時は越後や駿河などを経て、1555年には摂津国で三好長慶を頼り上洛しました。この時期には、長慶の病気回復を祈って醍醐寺に書状を送ったり、長慶の人質であった細川六郎に馬術を指南したりした記録も残っています。

信濃では武田氏と上杉氏が川中島で激しい戦いを繰り広げていましたが、長時は将軍足利義輝の命を受け、上杉謙信に信濃復帰の協力を求めました。1562年には、小笠原流弓馬術礼法の伝統を絶やさないため、同族の赤沢経直にその道統を託しました。これは、小笠原総領家と弓馬礼法の家が分離したことを意味します。1566年には足利義栄に太刀・馬を献上しましたが、その後織田信長が台頭し、足利義昭政権が樹立すると、長時は上杉氏のもとに移りました。

1578年の謙信死後の御館の乱では上杉景虎の使者を務めましたが、最終的には上杉景勝が家督を継承し、長時は越後を離れました。1581年には織田信長に迎えられ、信濃の名義上の旗頭として利用されました。その後、会津の蘆名盛氏に客分として迎えられ、戦略面で支援したとされています。

1583年、会津で70歳で死去しました。長男の小笠原貞慶は、織田信長に仕え、後に徳川家康に臣従し、旧領を回復しました。

死因について

長時の死因については諸説あります。自然死とする説がある一方で、家臣の坂西某によって殺害されたとする説も有力です。この説によれば、長時は酒宴の席で家臣の妻に性的ないやがらせをし、それに怒った坂西が長時とその妻・娘を斬殺したとされています。この事件は、長時の人物像や当時の社会状況を考察する上で重要な出来事です。

登場作品

小笠原長時を題材とした作品には、小説『とんぼさま』や、大河ドラマ『武田信玄』『風林火山』などがあります。これらの作品を通じて、小笠原長時の生涯や人物像に触れることができます。

まとめ

小笠原長時は、戦国時代の激動期を生き抜いた武将です。武田氏の侵攻によって領土を失い、各地を転々とする中で、一族の存続と旧領回復のために奔走しました。その生涯は波乱に満ち、様々な逸話や伝承が残されています。彼の人生は、戦国時代の武将の生き様を象徴するものであり、現代においても多くの人々の関心を集めています。

参考文献

今井尭「小笠原系図」『日本史総覧』 3（中世 2）、新人物往来社、1984年。
林哲『会津 芦名一族』(歴史春秋社)
平山優『武田遺領をめぐる動乱と秀吉の野望―天正壬午の乱から小田原合戦まで』 戎光祥出版、2011年
笹本正治『信濃の戦国武将たち』宮帯出版社､2016年

もう一度検索