善鸞

善鸞（ぜんらん）

善鸞は、鎌倉時代中期の浄土真宗の僧であり、慈信房（じしんぼう）とも号しました。真宗出雲路派では、毫摂寺（ごうしょうじ）の第二代として位置づけられています。

経歴

善鸞は、浄土真宗の開祖である親鸞の子として生まれました。母親については恵信尼（えしんに）とする説と、それ以外の女性とする説があります。また、親鸞の長男とする説と次男とする説が存在します。子に本願寺第二世の如信（にょしん）、末妹に覚信尼（かくしんに）がいます。

生年については承元4年（1210年）とする説があり、この説に従えば親鸞が配流されていた越後国で生まれたことになります。没年は正応5年（1292年）とする説があります。

父親である親鸞が関東での布教から京都に戻った後、関東の門弟たちの信仰上の動揺を鎮めるため、善鸞は関東へ派遣されました。しかし、関東において善鸞は、自身が親鸞から秘かに伝授された教義こそが正統であると主張したため、異端であるとされました。その結果、建長8年（1256年）5月29日付けで親鸞から義絶されることになります。この時の手紙は「善鸞義絶状」または「慈信房義絶状」と呼ばれています。ただし、この義絶状は高田派専修寺に収蔵されている顕智（けんち）による写本のみが現存しており、親鸞直筆のものは発見されていません。

義絶後、善鸞は巫祝（ふしゅく）または善知識として、関東を中心に布教活動を続けました。

恵信尼との関係

「善鸞義絶状」には、「マヽハヽニ イ井マトワサレタルトカヽレタルコト」、「マヽハヽノアマノイ井マトワセリト イフコト」という記述があります。この「マヽハヽ」という言葉について、2通りの解釈が存在します。一つは、字義通りに恵信尼を善鸞の義母と解釈する説です。もう一つは、実母である恵信尼を中傷して述べたものと解釈する説です。

「マヽハヽ」の後に「コトニ アサマシキコトナリ」、「アサマシキ ソラコトナリ」と続いていることから、細川行信、宮城顗、野田晋らは実母である恵信尼を中傷する表現であるとしています。日本史学者の平雅行は、「善鸞義絶状」に記されている「みぶの女房」を善鸞の実母、または実母の近親者であるとし、恵信尼を継母であると考察しています。

参考文献

真宗聖教全書編纂所 編『真宗聖教全書』 二 宗祖部（再版）、大八木興文堂、2009年1月。
浄土真宗教学伝道研究センター 編『浄土真宗聖典』 （原典版）、本願寺出版社、1985年。ISBN 4-89416-251-2。
浄土真宗教学伝道研究センター 編『浄土真宗聖典』 （註釈版）（第2版）、本願寺出版社、2004年。ISBN 4-89416-270-9。
真宗聖典編纂委員会 編『真宗聖典』真宗大谷派宗務所出版部、1978年。ISBN 4-8341-0070-7。
浄土真宗教学編集所 聖典編纂監修委員会 編纂『親鸞聖人御消息 恵心尼消息-現代語版』本願寺出版社〈浄土真宗聖典〉、2007年。ISBN 978-4-89416-263-1。
宮城 顗『宗祖聖人 親鸞』 下、真宗大谷派宗務所出版部、1988年。ISBN 978-4-8341-0182-9。
細川行信、村上宗博・足立幸子『親鸞書簡集-全四十三通』法藏館〈現代の聖典〉、2002年。ISBN 978-4-8318-4046-2。
平雅行『歴史のなかに見る親鸞』法藏館、2011年4月。ISBN 978-4-8318-6061-3。
平松令三、濱田隆・名畑崇・赤松徹真 監修『親鸞展-生涯とゆかりの名宝』朝日新聞社、2011年3月。

関連項目

歎異抄
隠し念仏
善永寺

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