四条隆親

四条隆親：鎌倉時代の公卿・歌人

四条隆親（しじょう たかちか）は、鎌倉時代前期から中期にかけて活躍した公卿であり、歌人としても名を残しました。大納言・四条隆衡の次男として生まれ、官位は正二位・権大納言にまで昇り、善勝寺長者（四条家当主）を務めました。

生涯

隆親は、平清盛の外孫にあたる父・隆衡を持ち、母方の叔母は源実朝の正室という血筋でした。元久2年（1205年）に従五位下に叙爵し、公卿としてのキャリアをスタートさせます。その後、貞応元年（1222年）に蔵人頭、元仁2年（1225年）に参議、寛喜3年（1231年）に権中納言、貞永元年（1232年）に正二位、嘉禎1年（1235年）に中納言、嘉禎4年（1238年）には権大納言へと順調に昇進しました。

後鳥羽上皇、後堀河天皇の近臣として朝廷に仕え、政治的な影響力も持ちました。特に、妻の足利能子（足利義氏の娘）が土御門天皇の皇子・邦仁王の乳母であったことが、隆親の運命を大きく左右します。仁治3年（1242年）に四条天皇が崩御すると、鎌倉幕府の意向により邦仁王が後嵯峨天皇として擁立され、能子は典侍となりました。隆親は、天皇が即位した冷泉万里小路第を所有していたこともあり、この擁立劇において重要な役割を果たしました。

さらに、姉の貞子が生んだ西園寺姞子が後嵯峨天皇の中宮に立てられたことで、隆親は姞子の祖父である西園寺公経と共に天皇を支える立場となります。妹の灑子が嫁いだ二条良実が関白に任じられたことで、摂関家との関係も構築しました。宝治元年（1247年）には中宮大夫、宝治2年（1248年）には皇后宮大夫を兼任するなど、朝廷内での地位を確固たるものとしました。

建長2年（1250年）に大納言となりますが、文応元年（1260年）に一度辞職します。しかし、嫡男とした隆顕との不仲が原因で、建治2年（1276年）に隆顕が権大納言を辞職・出家したため、隆親が再び大納言に還任するという異例の事態となりました。四条家の嫡流は長男・房名の系統が継承し、隆顕の系統は後に南朝に与して絶家となりました。

弘安2年（1279年）9月6日、78歳で波乱の生涯を閉じました。

人物・文化

隆親は、政治家としての手腕だけでなく、文化人としても才能を発揮しました。特に料理の腕前は有名で、その腕前を示す逸話も残されています。また、『宝治百首』には、「塩釜」を歌枕に詠んだ歌が採られるなど、歌人としても評価されていました。

系譜

父：四条隆衡
母：坊門信清の娘
妻：藤原範茂の娘（のち離縁）
妻：坊門信家の娘
長男：四条房名（1229-1288）
妻：足利能子 - 後嵯峨天皇乳母、典侍、足利義氏の娘
二男：四条隆顕（1243-?）
生母不明の子女
三男：鷲尾隆良（?-1296）
男子：隆任
男子：隆遍 - 大僧正、興福寺別当
女子：近子（?-1259） - 大納言典侍、源雅忠室、後深草院二条母
女子：隆子 - 典侍、従三位
女子：識子（1264-） - 鷲尾一品、伏見天皇乳母

隆親は、激動の鎌倉時代において、公卿として朝廷を支え、歌人としても名を残した人物でした。その生涯は、政治と文化が複雑に絡み合った時代の縮図とも言えるでしょう。

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