藤原範茂

藤原範茂（ふじわら の のりもち / のりしげ）

藤原範茂は、鎌倉時代前期に活躍した公卿です。藤原南家高倉流に連なり、式部権少輔を務めた藤原範季の次男として生まれました。官位は従三位・参議にまで昇り、順徳天皇にとっては母方の叔父にあたる人物です。

生涯

後鳥羽天皇の寵臣として重用され、姉である重子（修明門院）が後鳥羽天皇との間に儲けた順徳天皇の側近としても仕えました。その生涯は、朝廷内での華々しい活躍と、承久の乱における悲劇的な最期によって特徴づけられます。

建久9年（1198年）に従五位下に叙爵されたのを皮切りに、正治3年（1201年）には肥前守に任じられます。その後、左衛門佐・左兵衛佐・左近衛少将と武官を歴任し、承元3年（1209年）には従四位下に叙せられました。建暦2年（1212年）には左近衛中将、建保7年（1219年）には蔵人頭に任じられ、承久2年（1220年）には従三位・参議に叙任され、ついに公卿の仲間入りを果たしました。

承久3年（1221年）には丹波権守に任ぜられますが、同年、後鳥羽上皇が鎌倉幕府打倒の兵を挙げた承久の乱が勃発します。範茂は倒幕の密議に深く関与し、自ら宇治川の戦いに出陣しますが、上皇方は敗北。範茂は六波羅に拘禁され、乱の首謀者として斬罪が言い渡されます。

都での処刑を避けるため、鎌倉へ護送される道中、範茂は自ら入水を願い出て、足柄山の麓の清川（現在の貝沢川）で入水自殺を遂げました。着物の袂や懐に石を詰め、川に身を沈めたと伝えられています。これは、当時、斬首刑に処されると五体満足で極楽往生できないという信仰があったためだと考えられています。

辞世の句として、「思いきや　苔の下水せきとめて　月ならむ身の　やどるべきとは」が残されています。

範茂の死後、子の範継は北条泰時の意向により助命されました。しかし、承久3年12月10日（1222年1月23日）には、範茂の邸宅が放火されるという事件も起きています。

現在、神奈川県南足柄市怒田には範茂史跡公園があり、室町時代前期に作られたと伝えられる範茂の墓（宝篋印塔）が残されています。また、静岡県御殿場市の藍澤五卿神社には、承久の乱で処刑された藤原範茂、一条信能、源有雅、葉室宗行、藤原光親の五人が祀られています。

官歴

建久9年（1198年）正月11日：六位蔵人、正月24日：従五位下
正治3年（1201年）正月29日：肥前守
建仁2年（1202年）閏10月24日：左衛門佐
建仁3年（1203年）10月24日：従五位上
元久2年（1205年）正月5日：正五位下（春宮御給）、正月29日：遷右兵衛佐、8月17日：復任
承元元年（1207年）10月29日：右近衛少将、12月9日：越後守
承元3年（1209年）正月5日：従四位下（修明門院御給）
承元5年（1211年）正月21日：従四位上
建暦2年（1212年）正月13日：右近衛中将
建保3年（1215年）2月14日：正四位下（修明門院御給）
建保6年（1218年）4月21日：左近衛中将
建保7年（1219年）正月22日：蔵人頭
承久2年（1220年）正月22日：参議（左中将如元）、4月6日：従三位
承久3年（1221年）正月13日：丹波権守

系譜

父：藤原範季
母：平教子
妻：中納言局（平知盛の娘）
男子：藤原範継（1206-?）
女子：四条隆親室
生母不詳の子女
男子：藤原範有
男子：藤原範房（1212-1278）
男子：藤原範能
男子：藤原範任
男子：雲円
女子：忠成王妃

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