回帰熱

回帰熱

回帰熱（かいきねつ、relapsing fever）は、スピロヘータの一種であるボレリア（Borrelia）によって引き起こされる感染症であり、主にシラミやダニによって媒介されます。本疾患の名称は、特徴的な発熱期と無熱期が繰り返されることに由来しています。

疫学

日本では、1950年以降に回帰熱の患者が報告されていませんでしたが、2010年にウズベキスタンから帰国した患者が初めて確認され、その後2012年にはアルジェリアに在住する日本人男性が罹患したケースも報告されました。2013年には国立[[感染症研究所]]が実施した調査で、ライム病の疑いがある患者の血液中からBorrelia miyamotoiのDNAが検出され、日本国内での感染が特定できました。Borrelia miyamotoiによる回帰熱は、硬ダニと呼ばれるマダニ科のIxodesによって媒介されています。この特定のボレリアは、2011年にロシアで初めて報告され、その後も北ヨーロッパや北アメリカでの感染例が相次ぎ「古くて新しい感染症」として注目を集めています。

臨床像

シラミ媒介性回帰熱

ボレリアが原因となるこのタイプは、主に中央アフリカや東アフリカの山間部、また南アメリカのアンデス山脈で流行します。特に紛争地域や難民キャンプでの流行が目立ち、発熱期の患者がシラミを吸血することで感染が広がります。シラミが押し潰されて放出される病原体は、皮膚の擦り傷を通じて感染する要因となります。

ダニ媒介性回帰熱

アメリカ、特にロッキー山脈やグランドキャニオン、さらにはアフリカ、アジア、ヨーロッパでも感染例が報告されています。この感染症は、主に齧歯類から病原体を宿すダニが媒介し、ダニに咬まれた際に唾液や排泄物を通じて感染が成立します。

病原体と症状

回帰熱を引き起こすボレリアは少なくとも十数種が知られており、以下のようなものがあります。

• - Borrelia recurrentis（シラミ媒介）
• - B. hermsii
• - B. turicatae
• - B. miyamotoi（2012年に病原性が示唆）

回帰熱は、発熱期と無熱期を数回繰り返すことが最大の特徴です。

発熱期

感染が始まると、患者は主に40℃前後の発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛などを訴え、場合によっては黄疸や全身倦怠感、点状出血、紫斑も見受けられます。また、髄膜炎や肝炎などの合併症も現れることがあります。

無熱期

発熱が解消されると、血液中の菌が消失し、発汗や倦怠感がみられることがあります。この無熱期は5〜7日続き、その後再び発熱が繰り返されることになります。

治療法と予防

回帰熱の治療は主に抗生物質に依存し、感染の種類によって異なる薬剤が用いられます。たとえば、シラミ媒介性の場合はテトラサイクリン、マダニ媒介性の場合はミノサイクリンやセフトリアキソンなどが効果的です。予防に関しては、抗菌薬の予防投与が考慮されますが、感染予防用のワクチンは現在のところ開発されていません。

致死率

未治療の場合の致死率は約数％から30%と高めで、心筋炎や脳出血、肝不全が死因となることがあります。

回帰熱は、経済状況や衛生環境が悪い地域において特にリスクが高く、注意が必要な感染症の一つです。

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