因幡国分寺

因幡国分寺とは

因幡国分寺（いなばこくぶんじ）は、鳥取県鳥取市国府町国分寺にある黄檗宗の寺院です。山号を最勝山といい、本尊に薬師如来を祀っています。この寺院は、奈良時代に聖武天皇の詔によって日本各地に建立された国分寺のうち、因幡国国分僧寺の後継寺院にあたります。この記事では、現在の寺院だけでなく、寺院跡である因幡国分寺跡（史跡指定なし）と、因幡国分尼寺の推定地についても詳しく解説します。

歴史

古代

因幡国分寺の創建時期は正確にはわかっていませんが、天平13年（741年）の国分寺建立の詔の後に創建されたと考えられています。延長5年（927年）に成立した『延喜式』主税上には、国分寺の運営費用として稲3万束が規定されていたことが記されています。しかし、その後の変遷については詳しい記録が残っていません。

近世

江戸時代の地誌『因幡民談記』によると、因幡国分寺は当初は草堂でしたが、延宝年間（1673-1681年）に活禅によって堂宇が再建され、鳥取藩から寺料として2万石が与えられたとされています。天保5年（1834年）の「寺院山伏神主御免地帳」には、境内平地1反3歩のうち4畝余りが除地とされていたことが記録されており、本寺は興禅寺（鳥取市栗谷町）であったとされています。

近代以降

近代に入ってからの因幡国分寺に関する主な出来事は以下の通りです。

1965年（昭和40年）頃、国分寺集落の南方の水田で17個の塔の礎石が発見され、そのうち8個が国分寺境内に移されました。
1972年から1979年（昭和47-54年）にかけて、鳥取県教育委員会によって発掘調査が行われました。

因幡国分寺跡

因幡国分寺の僧寺跡は、約220メートル四方の範囲に広がっていたと推定されており、現在の国分寺集落と重なる場所に位置しています。主要な伽藍として、塔と南門が確認されていますが、伽藍の具体的な配置はまだ解明されていません。以下に、発掘調査で確認された遺構の詳細を示します。

塔

塔は、経典（金光明最勝王経）を納めるために建てられたもので、国分寺以外の場合は釈迦の遺骨（舎利）を納める場所でした。国分寺集落の南方で17個の礎石が発見され、そのうち8個が国分寺境内に移設されています。これらの礎石は鳥取市指定保護文化財に指定されています。基壇上の建物は一辺8.1メートルで、柱の間隔が均等な三間構造でした。

南門

南門は国分寺の正面に位置する門で、大きく削平を受けていますが、細男神社の南約90メートルの地点で掘込地業が検出され、南門の遺構とされています。その他、金堂は細男神社境内付近、中門は集落南中央入り口付近にあったと推定されています。寺域からは、瓦、土器片、柱などの出土品が見つかっています。

因幡国分尼寺跡

尼寺の正確な所在地は不明ですが、国分寺の西方にある法花寺集落（鳥取市国府町法花寺）に存在したと推定されています。法花寺集落付近に残っていた礎石の多くは、江戸時代の常忍寺（鳥取市行徳）建立時に持ち出されたとされていますが、同地の産湯の井戸付近には、江戸時代に掘り出されたとされる礎石が置かれています。この礎石は手水鉢に加工されて庭に置かれた後、集落外に持ち出されましたが、近年になって元の場所に戻されました。現在は鳥取市指定保護文化財となっています。法花寺集落周辺の水田では発掘調査が行われていますが、今のところ遺構は確認されていません。

国分寺集落と法花寺集落の間には「犬塚」という石碑があります。これは、国分寺と国分尼寺の両寺で飼われていた犬が両寺の間で死んだという伝説に由来するもので、江戸時代に碑が建てられ、現在は鳥取市指定史跡となっています。

文化財

因幡国分寺に関連する文化財は以下の通りです。

鳥取市指定文化財

保護文化財（有形文化財）
国分寺の礎石
法華寺の礎石
史跡
犬塚

関連施設

因幡万葉歴史館（鳥取市国府町）

脚注

参考文献

境内説明板
『日本歴史地名大系 32 鳥取県の地名』平凡社、1992年。ISBN 4582490328。「法花寺村」、「国分寺村」、「因幡国分寺跡」の項目を参照。
中世諸国一宮制研究会編 編『中世諸国一宮制の基礎的研究』岩田書院、2000年。ISBN 978-4872941708。
『因幡万葉歴史館展示案内 5版』公益財団法人鳥取市文化財団 因幡万葉歴史館、2014年。

外部リンク

* 法花寺の礎石 - 因幡万葉歴史館ホームページ

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