国務会議 (イングランド)

イングランド共和国における国務会議：清教徒革命期の政治機構

イングランド共和国、特に清教徒革命期において重要な役割を果たした政治機関「国務会議」について、その成立から廃止までを詳細に解説します。国務会議は、行政を担当する機関でしたが、その位置づけや名称は時代とともに変化しました。

第1期国務会議 (1649年-1653年)：議会の付属機関

1649年2月14日、ランプ議会（残存議員議会）の付属機関として設立されました。この構想は、1647年のアイアトンとランバートによる『建議要目』に既に存在しており、王権を制限する機関として構想されていました。

構成員は41名で、議会から31名、ニューモデル軍から10名が選出されました。任期は1年で、議会から多くの行政権限を委譲され、実務を処理しました。初代議長には、ニューモデル軍副司令官（後に司令官）オリバー・クロムウェルが選出され、1651年と1652年も再選されています。

メンバーには、クロムウェルの側近であるハリソンやフリートウッドといった軍幹部だけでなく、ジェントリや議員経験者も含まれていました。ランプ議会とは異なり、有能で改革意欲に満ちた人材が多く、その働きぶりは外国人からも高く評価されています。

クロムウェルの秘書ジョン・サーローは、委員ではないものの情報収集や外交顧問として重要な役割を果たし、彼のスタッフも外交に関わったことで、国務会議は内政だけでなく外交も担当するようになりました。

しかし、国務会議の活動は限定的でした。平等派指導者リルバーンらの審問、第一次英蘭戦争の審議、フランスのユグノー支援などが主な活動でした。ランプ議会の自己保身的な姿勢に軍の不満が高まり、1653年4月20日、クロムウェルとハリソンによるクーデターによって議会は解散され、国務会議も消滅しました。

第2期国務会議 (1653年-1660年)：護国卿と協調、そして対立

1653年12月16日、統治章典の公布によりクロムウェルが護国卿に就任すると、国務会議も復活しました。第1期と同様に行政と外交を担当しましたが、その役割は変化していました。第1期が議会の付属機関だったのに対し、第2期は護国卿と共に立法・行政を行う機関として位置づけられました。

委員数は22名に減少し、任期は終身制となりました。議会閉会中は、護国卿の軍事・外交行動には国務会議の同意が必要であり、後任護国卿の指名権も持つなど、権限が強化され、護国卿への牽制機能も持っていました。

しかし、委員はランバートを始めとするクロムウェルの支持者や側近が多く、サーローやボイル、マンクといった外部協力者も影響力を持っていたため、国務会議は事実上クロムウェルの諮問機関と化し、護国卿への牽制というよりはむしろ、彼の支持基盤強化に繋がりました。

外交面では、スペインとの戦争（英西戦争）、ウィリアム・ペン艦隊の西インド諸島遠征（失敗）、フランスとの貿易協定（後にパリ条約）などが行われました。

1654年9月3日に第一議会が開かれる予定でしたが、それまでの9ヶ月間はクロムウェルが国務会議の同意を得て独自に法を発布し、様々な問題解決に取り組みました。しかし、第一議会が始まると、クロムウェルと国務会議の改革姿勢は無視され、議会は統治章典を含む護国卿体制への批判を展開しました。

政府と議会の方向性の違いが明確になると対立が深まり、混乱を収拾するためにクロムウェルは1655年1月22日に議会を解散しました。その後、1656年9月17日に第二議会が召集されましたが、軍政監による地方への強権的な介入への反発から、反対派が多数選出されました。

国務会議は統治章典を濫用して議員100名を追放しましたが、議会の抵抗は変わらず、クロムウェルの不興も買いました。この追放劇は、政府の評判を著しく低下させました。

議会ではクロムウェルを王とする提案も出され、体制転換が議論されましたが、クロムウェルはこれを拒否しました。代わりに、統治章典を修正した「謙虚な請願と勧告」が制定され、組織構造は以前の王政に近づきました。国務会議は名称を枢密院に変更され、護国卿が任免権を持ち、権限は縮小されました。

1658年にクロムウェルが死去し、後継の息子リチャード・クロムウェルは軍と対立し、1659年にはランプ議会が復活しました。国務会議も軍と共和派が実権を握る形で復活しましたが、リチャードの辞職後も混乱は続き、マンクの支援を得て事態は収拾されました。最終的に、1660年の王政復古によって国務会議は廃止されました。

結論

国務会議は、イングランド共和国の歴史において、議会と軍の複雑な関係、そしてクロムウェルの権力掌握と維持において重要な役割を果たした政治機関でした。その存在期間を通して権限や位置づけは変化し、最終的には王政復古によって消滅しました。その興亡は、清教徒革命期の政治的動向を理解する上で重要な鍵となります。

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