国司伍七

国司伍七（くにし ごしち）は、1870年（明治3年）に山口県で生まれ、1939年（昭和14年）に没した日本の陸軍軍人です。最終階級は陸軍中将。旧姓は松岡。彼は、第一次世界大戦後の日本陸軍において、騎兵廃止論の先駆者として知られています。

生い立ちと初期の軍歴

山口県出身の国司は、松岡百合松の五男として生まれ、後に国司順正陸軍少将の養子となりました。山口高等中学校を中退後、成城学校を経て陸軍士官学校に進み、1894年（明治27年）に卒業（5期、歩兵科首席）。同年9月、歩兵少尉に任官し、近衛歩兵第2連隊に配属されました。日清戦争には、1895年（明治28年）4月から11月まで出征しています。その後、陸軍大学校に進み、1901年（明治34年）に優等で卒業（15期）。

ドイツ駐在と日露戦争

1902年（明治35年）には参謀本部に出仕し、参謀本部員を経て、1903年（明治36年）から翌年4月までドイツに駐在。1904年（明治37年）には、満州軍参謀（兵站）として日露戦争に出征。1905年（明治38年）には歩兵少佐に昇進し、第10師団参謀に就任しました。その後、1906年（明治39年）から1908年（明治41年）まで再びドイツに駐在しました。

昇進と要職

帰国後、近衛歩兵第3連隊付を経て、1909年（明治42年）に歩兵中佐に進級。歩兵第42連隊付となりました。1912年（明治45年）には陸軍戸山学校教官に就任。陸軍歩兵学校教育部長を経て、1913年（大正2年）には歩兵大佐に進級しました。その後、1915年（大正4年）には歩兵第23連隊長に就任し、1918年（大正7年）には陸軍少将に進級、参謀本部第4部長に着任しています。
1922年（大正11年）には陸軍中将に進み、東京湾要塞司令官に。1923年（大正12年）には第7師団長に親補されました。1926年（大正15年）に待命となり、同月、予備役に編入されました。

騎兵論争

第一次世界大戦後、火器や軍用機の著しい発達により、騎兵の存在意義が問われるようになりました。そのような状況下、国司は日本陸軍内で騎兵廃止論の急先鋒として立ち上がります。

1919年（大正8年）11月、参謀本部第4部長であった国司少将は、『偕行社記事』に「騎兵ノ将来ニ就イテ」と題する論文を発表。この中で彼は、第一次世界大戦の戦訓を踏まえ、乗馬戦闘用の騎兵は廃止し、伝令や斥候用の乗馬歩兵で十分であると主張しました。当時、絶大な権勢を誇っていた長州閥の参謀本部部長の意見であったため、この主張は騎兵将校たちに大きな衝撃を与えました。

これに対し、植野徳太郎軍馬補充部本部長や大島又彦陸軍騎兵学校長らが反対の論陣を張り、激しい論争が繰り広げられました。しかし、騎兵科の重鎮であった吉橋徳三郎少将が国司との論争の末に自殺したことで、この論争は事実上終結しました。しかし、騎兵問題は根本的に解決されることなく、その後も機甲兵の設置まで燻り続けることになりました。

栄典

国司は、その軍歴において、以下の栄典を受けています。

1894年（明治27年）10月26日 - 正八位
1922年（大正11年）9月11日 - 従四位
1924年（大正13年）12月1日 - 正四位

まとめ

国司伍七は、陸軍軍人として数々の要職を歴任する一方で、第一次世界大戦後の軍事戦略において重要な問題を提起した人物でした。彼の騎兵廃止論は、当時の軍部に大きな影響を与え、その後の日本の軍事戦略に一石を投じることになりました。

参考文献

佐久間亮三『日本騎兵史』下、原書房〈明治百年史叢書〉、1970年。
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。

関連項目

吉橋徳三郎 - 国司と論争の末に自殺した陸軍少将

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