国家と革命

『国家と革命』は、ウラジーミル・レーニンが1917年に執筆した政治に関する重要な著作です。この書は、レーニンが2月革命後のボリシェヴィキ弾圧を逃れて潜伏していた時期に、ペトログラード郊外のラーズリフ湖畔で執筆されました。初版は十月革命直後に発表され、翌1918年には第2章に新たな節が加えられた第2版が刊行されました。

構成

本書は全7章で構成されており、レーニンの国家理論と革命運動の方針が詳細に述べられています。

第1章：階級社会と国家
第2章：国家と革命・1848年から1851年の経験
第3章：国家と革命・1871年のパリ・コミューンの経験
第4章：続き
第5章：国家死滅の経済的基礎
第6章：日和見主義者によるマルクス主義の卑俗化
* 第7章：1905年と1917年のロシア革命の経験

レーニン自身によれば、第7章は十月革命の勃発により未完に終わったとされています。

思想

レーニンは、国家を階級支配を維持するための機関と捉えました。エンゲルスの研究を引用しながら、国家は社会から発生しながらも社会の上位に立ち、自らを疎外する権力であると論じました。したがって、国家は階級の衝突を緩和しつつ、その支配を維持する政治秩序を創出する存在であると規定しました。既存のブルジョア独裁国家は、革命によってプロレタリアートが強制力をもって廃絶し、プロレタリア独裁国家を樹立する必要があると主張しました。

さらにレーニンは、革命は選挙による政権交代ではなく、暴力革命でなければならないと主張しました（暴力革命不可避論）。ブルジョア国家の一部であるブルジョア民主主義もまた廃絶されるべきとしました。この主張のために、レーニンはマルクスが著作でわずかに触れた「プロレタリア独裁」という用語を「民主主義の最高形態」として「発見」し、以後の著作で大々的に使用しました。

本書で提示される社会のビジョンは、公選によって交代で統治する権力形態の創出であり、官僚制、警察機構、軍隊などは全て廃止されます。立法、行政、司法を結合した労働者ソビエトが統治の主体となるとしました。

また、他のレーニンの著作と同様に、メンシェヴィキ、カデットなどの非ボリシェヴィキ団体や、カール・カウツキーなどの社会民主主義者、無政府主義者らを批判しました。

レーニンは、たとえ最も進んだ民主的な共和制であっても、結局はブルジョワジーによるプロレタリアートに対する独裁に他ならないと断じました。そのような国家はプロレタリア革命によって「廃絶」され、プロレタリア国家が建設されるべきとしました。このプロレタリア国家は、プロレタリアートにとって最も民主主義的であると同時に、プロレタリア階級によるブルジョワ階級に対する独裁を行うとしました。そして、このようなプロレタリア国家は、やがて死滅していくとレーニンは記述しました。プロレタリア国家は、資本主義から社会主義に至る過程の過渡期国家と位置づけられています。

テキスト

原文と英訳は、Marxists Internet Archiveで閲覧可能です。日本語訳としては、岩波文庫の宇高基輔訳や講談社学術文庫の角田安正訳などが刊行されています。



この著作は、レーニンの国家理論と革命思想を理解する上で不可欠な文献であり、その後のマルクス主義運動に大きな影響を与えました。

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