国鉄9200形蒸気機関車

9200形蒸気機関車

9200形蒸気機関車は、1905年（明治38年）に鉄道作業局（後の日本国有鉄道）が、アメリカのボールドウィン社から50両を輸入したテンダ式蒸気機関車です。車軸配置は1D（コンソリデーション）で、その大きさと力強さから「大コン」という愛称で親しまれました。

概要

日露戦争において、陸軍は満洲での兵站輸送にB6形蒸気機関車を使用していましたが、輸送力不足が深刻でした。そこで、陸軍は臨時軍事費を用いて、より大型で強力な機関車を求めて9200形を発注しました。この機関車は元々、北海道官設鉄道が導入を計画していたものでしたが、陸軍の需要増加により発注数が増加しました。

製造番号は26226から27074に及びます。

構造

9200形は、ボールドウィン社の種別呼称で10-30Eと称される、2気筒単式の飽和式テンダ機関車です。製造期間が短かったため、前年にセントラル・オブ・ジョージア鉄道から受注した機関車を基に、軌間や火床寸法を変更して製造されました。

火室は狭火室式で、第3動輪と第4動輪の間に配置されています。ボイラーはストレートトップ式で、第2缶胴上に蒸気ドーム、第1缶胴上と火室上に砂箱が設けられています。安全弁はポップ式で、蒸気ドームと後部砂箱の間に設置されました。歩み板は当初、シリンダー直後から運転台まで一直線に伸びていましたが、空気制動化に伴い短縮され、空気タンクや圧縮機などが取り付けられました。前端梁とボイラーの煙室側部は、ブレースと呼ばれる支柱で連結されています。

炭水車は、アーチバー式の2軸ボギー台車を2つ備えた4軸式で、水槽容量は2,300ガロンです。

主要諸元

全長：17,329 mm
全高：3,748 mm
軌間：1,067 mm
車軸配置：2-8-0(1D)
動輪直径：1,092 mm（1909年製）、1,120 mm（1931年製）
弁装置：スチーブンソン式アメリカ形
シリンダー（直径×行程）：457 mm×559 mm
ボイラー圧力：12.0 kg/cm2
火格子面積：1.92 m2
全伝熱面積：116.6 m2
煙管蒸発伝熱面積：106.6 m2
火室蒸発伝熱面積：10.6 m2
ボイラー水容量：4.9 m3
小煙管（直径×長さ×数）：45 mm×3,921 mm×215本
機関車運転整備重量：48.72 t
機関車空車重量：44.80 t
機関車動輪上重量（運転整備時）：43.16 t
機関車動輪軸重（最大・第3動輪上）：12.80 t
炭水車運転整備重量：29.02 t
炭水車空車重量：15.29 t
水タンク容量：11.0 m3
燃料積載量：2.70 t

経歴

9200形は、30両が満洲、20両が内地で使用される予定で、鉄道作業局ではF2形（800 - 849）とされました。満洲に送られた車両は、南満洲鉄道が標準軌に改軌するまで使用され、その後内地に還送されました。内地で使用された車両のうち、一部は台湾総督府鉄道に譲渡され、60形（後に120形）となりました。

1909年（明治42年）には、鉄道院の車両形式称号規程により、9200形（9200 - 9246）に改番されました。当初は東海道本線で使用され、重量貨物列車の牽引に充てられました。満洲からの還送車は、奥羽本線、中央本線、関西本線、北陸本線、山手線などに配置され、勾配区間や貨物列車の牽引に使用されました。

奥羽本線の板谷峠区間では、牽引力不足による事故が発生し、4100形などの5動軸機関車導入のきっかけとなりました。その後、9200形は北海道にも配置され、各地で活躍しました。1916年（大正5年）には、全車が北海道に集結しました。

1923年（大正12年）頃から、より強力な9600形の増備に伴い、9200形は次第に二線級に退いていきました。1927年（昭和2年）以降、廃車が始まり、一部は民間の炭鉱鉄道に払い下げられました。戦後も一部が使用されましたが、1950年（昭和25年）までに全車が廃車となりました。台湾総督府鉄道部の車両も、1933年（昭和8年）に廃車となっています。

譲渡

9200形は、戦前・戦後に計5両が炭鉱鉄道へ払い下げられました。これらの機関車は1960年代まで使用されましたが、現存する車両はありません。

9201：大夕張炭礦専用鉄道、三菱鉱業芦別鉱業所専用鉄道
9217：美唄鉄道、大夕張炭礦専用鉄道、三菱茶志内炭礦専用鉄道
9233：美唄鉄道、大夕張炭礦専用鉄道、釧路埠頭倉庫専用線、雄別炭礦鉄道
9237：美唄鉄道、大夕張炭礦専用鉄道、三菱鉱業芦別鉱業所専用鉄道
9224：釧路埠頭倉庫専用線、雄別炭礦鉄道

参考文献

臼井茂信『日本蒸気機関車形式図集成』誠文堂新光社、1969年。
臼井茂信『機関車の系譜図 1』交友社、1972年。
金田茂裕『日本蒸気機関車史 官設鉄道編』交友社、1972年。
川上幸義『私の蒸気機関車史 上』交友社、1978年。
高田隆雄『万有ガイドシリーズ12 蒸気機関車 日本編』小学館、1981年。

関連項目

国鉄9000形蒸気機関車
国鉄9050形蒸気機関車
国鉄9300形蒸気機関車
国鉄9700形蒸気機関車
* 夕張鉄道11形蒸気機関車

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