国防献金

国防献金（献納醵金）とは

国防献金（献納醵金）とは、1930年代から第二次世界大戦終結までの間、日本国民や外地の官民が、国防品購入のために用途を指定して軍部に献上した金銭や物品のことです。

国防献金の始まり

国防献金の始まりは、1931年（昭和6年）の満州事変勃発時に、在満部隊に鉄兜がないことを知った高崎市民の団体「国民国防同盟会」が、鉄兜89個分の2,001円を献納したことでした。当時、市井から軍隊への寄付金は、日清戦争や日露戦争の際にもありましたが、使用する物品を指定した献金は初めての事例でした。

陸軍は、献金を国庫の歳入ではなく直接受け取りたいという思惑があり、この動きに合わせて指定寄付制度が発足。「一日一銭献金運動」として全国に広まりました。

「国民国防同盟会」はその後、愛国機献納運動の母体となり、飛行機や高射兵器など、さまざまな装備を指定した金銭寄付へと発展。軍部はこれを背景に軍事費の増額を実現していきました。
1933年初頭の時点で、寄付金は陸軍のために700万円、海軍のために100万円に達し、そのうち飛行機は陸軍機75機、海軍機28機でした。また、在外将兵を慰労するための恤兵金品もありました。

飛行機の場合、献納された機体は陸軍では「愛国号」、海軍では「報国号」と称されました。陸軍は代々木練兵場、海軍は羽田飛行場にて献納式を行い、式の後には地上射撃・爆撃や曲技飛行が実演されることもありました。

寄付の強制化

当初は「国民国防同盟会」が主導していた献金運動でしたが、対象が航空機となると、会員一人一人の寄付では手に負えない高額でした。そのため、群馬県では全国の県民号の先駆けとなった「愛国第七号（群馬県民号）」（九一式戦闘機）を1932年3月に献納した際、寄付額を町村へと割り当てる強制寄付に変質しました。

宮城県でも献納機の動きがありましたが、不況と不作のため、町村長会にて献納寄付を見合わせるよう申し入れられました。しかし、寄付の強制化は軍国体制に飲み込まれる形で既成事実化し、当時の陸軍大臣荒木貞夫は献納運動の盛り上がりを背景に、内閣において更なる軍事費増額を求めるようになりました。

航空機献金は、全国的な集団か軍需産業、軍需景気の恩恵を受ける県や特定都市に限られており、連隊区司令部が県に働きかける形で、知事を愛国国民号献納期成同盟の会長とし、在郷軍人会、男女青年団、大日本連合婦人会、愛国婦人会の参加によって市町村単位で割り当てられた献金を集めました。

陸軍学芸技術奨励寄付金制度

国防献金のうち、陸軍の制式兵器、器材、被服、献納機「愛国号」、発明賞金などを対象とした指定寄付は、1932年（昭和7年）1月より陸軍学芸技術奨励寄付金として取り扱われるようになり、陸軍省在郷軍人会の所管に移されました。

海防献金

国防献金に先立つ1887年（明治20年）、日本の海軍の立ち遅れを懸念した明治天皇が総理大臣伊藤博文に手許金30万円を下賜したことを契機に、華族や豪商を中心とした有志による海防献金（海防拠金とも）が募られました。この時、合わせて財源となる所得税法（旧法）も制定されています。

これらの資金を元に日本の要所に海岸要塞が整備され、明治20年度から25年度にかけて二十八糎榴弾砲を主体とした212門の沿岸砲が配備されました。この海防献金の盛り上がりの背景には清国北洋艦隊の水兵による暴動、長崎事件があり、国民の国防に対する関心が高まっていました。

1887年5月、海防献金制度の発足に合わせ、私財を献納した者への褒章として、黄綬褒章（旧）金章、銀章の二種が制定されました。褒章の表面には沿岸砲が鋳出されています。

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