国際GNSS事業

国際GNSS事業（IGS）とは

国際GNSS事業（International GNSS Service; IGS）は、地球科学、測位、航法など様々な分野で利用される高精度なGNSS（全球測位衛星システム）データを提供するための国際協力組織です。世界中の多くの機関が自主的に連携し、GNSS観測データを収集・解析することで、最高精度のGNSS成果を生成しています。IGSは、国際測地学協会（IAG）の下に1994年に設立され、米国・パサデナのジェット推進研究所に中央局を置いています。

IGSの主な機能

IGSは、以下の目的を達成するために活動しています。

高品質なGNSSデータの提供: 地球基準座標系の維持、地球観測研究、測位・航法、時間管理など、様々な分野で利用可能な最高品質のGNSSデータを提供します。
国際協力に基づく観測網の維持: 世界各地に展開されたGNSS観測網を維持し、データ流通と解析を継続的に行います。
精密なGNSS成果の生成: GNSS衛星の精密軌道暦、地球回転パラメータ、観測点の座標と速度、衛星・観測点の時計情報、電波伝搬遅延の推定、電離層分布など、GNSSに関する様々な成果を提供します。

これらの成果は、国際地球回転・基準系事業（IERS）が維持する国際地球基準座標系の改良、地球変形の監視、地球回転の監視、対流圏・電離圏の監視、科学衛星の軌道決定など、多くの地球科学研究に活用されています。

IGSの沿革

IGSは、GNSS技術の発展とともに、その名称と役割を変化させてきました。

1989年: 国際測地学協会（IAG）総会で、GPS観測の標準化と精密軌道暦の作成に関する議論が開始されました。
1991年: 各国機関への参加呼びかけが行われ、100以上の機関が参加を表明しました。
1991年: 国際測地学・地球物理学連合（IUGG）総会で、国際GPS地球力学事業（IGS）の設立計画が提案され、ジェット推進研究所（JPL）が中央局となることが決定しました。
1992年: 国際共同観測キャンペーンを通じて、活動方針の妥当性が検証されました。
1994年: 国際GPS地球力学事業（IGS）として正式に運用が開始されました。
1999年: IUGGとIAGの総会で、国際GPS事業（IGS）、国際GPS機構、国際GPSサービスなど、様々な名称で呼ばれるようになりました。
2001年: IERSの組織再編により、IGSはIERSの技術センターの一つに位置付けられました。
2003年: IUGGとIAGの総会で、GNSSという一般名称が使われ始め、ロシアのGLONASSの精密暦の提供も開始されました。
2007年: IUGGとIAGの総会で、国際GNSS事業（IGS）という名称が正式に採用されました。

日本の貢献

日本は、IGSに対して重要な貢献を行っています。

GNSS連続観測データの提供: 国内の電子基準点などのGNSS連続観測局を運用し、IGSに定常的にGNSSデータを提供しています。
解析センターとしての参画: 国土地理院と宇宙航空研究開発機構が共同で解析センターとして参画し、測位衛星の精密な軌道暦算出を行っています。

まとめ

国際GNSS事業（IGS）は、世界中の機関が連携し、高精度なGNSSデータを提供する国際協力組織です。地球科学研究や測位・航法分野に不可欠な情報を提供し、地球基準座標系の維持や地球変動の監視に貢献しています。GNSS技術の発展とともに、その重要性はますます高まっています。

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