国際地球回転・基準系事業

国際地球回転・基準系事業（IERS）とは

国際地球回転・基準系事業（International Earth Rotation and Reference Systems Service; IERS）は、地球の自転と基準系に関するデータ、規格を提供する国際機関です。天文学、測地学、地球物理学のコミュニティに対し、地球の正確な測定と理解に不可欠な情報を提供しています。

IERSの主な機能

IERSは、以下の主要な機能を通じて、科学コミュニティに貢献しています。

基準系の提供:
国際天文準拠系（ICRS）とその実現である国際天文基準座標系（ICRF）
国際地球準拠系（ITRS）とその実現である国際地球基準座標系（ITRF）
地球回転変動の研究:
地球姿勢パラメータ（EOP）の提供：ICRFとITRF間の変換に必要
地球姿勢パラメータ（EOP）には世界時（UT1）も含まれる。
地理データの提供:
ICRF、ITRF、地球姿勢パラメータの時空変動を解釈・モデル化するデータ
規格と定数の提供:
国際的な準拠を促進するための規格、定数、モデル（規約）

IERSは、これらのデータと情報を提供することで、地球の動きや形状を精密に把握し、様々な科学研究を支援しています。

IERSの歴史

IERSは、1987年に国際天文学連合（IAU）と国際測地学・地球物理学連合（IUGG）によって設立されました。それ以前の国際極運動観測事業（IPMS）と国際報時局（BIH）の地球回転に関する事業を引き継ぐ形で、国際地球回転観測事業（IERS）として発足しました。事業開始は1988年1月1日です。

当初、IERSの中央局はパリ天文台に置かれ、フランス経度局とフランス国立地理学研究所（IGN）が共同で運営に携わっていました。組織は、中央局に加え、地球座標系部門、地球姿勢部門、天球座標系部門、速報事業補助局（後に速報事業・予報担当）で構成されていました。また、超長基線電波干渉法（VLBI）、月レーザー測距（LLR）、人工衛星レーザー測距（SLR）の各総括センターも組織に含まれていました。

その後、IERSは組織の拡充と技術の進歩に対応するため、以下の変遷を遂げました。

1989年3月：大気角運動量担当の補助局を設置
1990年1月：GPS総括センターを設置
1994年10月：DORIS総括センターを設置
1998年1月：大気角運動量担当補助局を、大気、海洋、水文学を含む地球流体に関するGGF総括センターに改組

2001年1月1日には、組織を再編し、観測に関する事業を技術センターとして分離しました。これにより、IERSはデータの管理と高度化に注力することになりました。同時に、中央局はパリ天文台からドイツ連邦地図測量庁（BKG）に移転し、中央局長も交代しました。

2003年に現在の国際地球回転・基準系事業に改称しましたが、略称はIERSのまま維持されました。

関連機関

IERSは、以下の国際的な観測事業と密接に連携しています。

国際GPS地球力学事業（IGS）：1994年に国際測地学協会（IAG）が設立
国際レーザー測距事業（ILRS）：1998年に設立
国際VLBI事業（IVS）：1999年に設立
国際DORIS事業（IDS）：設立を計画

これらの組織との協力により、IERSは地球に関する様々な観測データを収集し、高度な研究に活用しています。

提供データと閏秒

IERSが提供する地球姿勢パラメータ（EOP）には、世界時（UT1）も含まれており、かつては閏秒の発表も担当していました。閏秒は、地球の自転速度の変動に合わせて調整される時間であり、協定世界時（UTC）と太陽の動きとのずれを補正する役割があります。

まとめ

国際地球回転・基準系事業（IERS）は、地球の自転と基準系に関する重要な情報を提供する国際機関です。天文学、測地学、地球物理学の分野において、精密な地球の測定と理解に不可欠な役割を果たしています。その歴史を通じて、組織と技術の進歩に対応し、地球科学の発展に大きく貢献しています。

関連項目

国際原子時 (TAI)
世界時 (UT)
協定世界時 (UTC)
国際地球基準座標系 (ITRF/ITRS)
国際天文基準座標系 (ICRF/ICRS)
地球の自転、ΔT
IERS基準子午線

外部リンク

英語'>公式サイト
英語、フランス語、ロシア語'>Earth Orientation Center of the IERS パリ天文台のデータとインタラクティブ分析
英語、フランス語'>International Celestial Reference Frame of the IERS

もう一度検索