土肥氏

土肥氏

土肥氏（どひし、どひうじ/どいし、どいうじ）は、日本の氏族の一つであり、坂東八平氏の桓武平氏良文流、中村氏の一族に連なる。
家紋は左三つ巴を使用している。

主な土肥氏の流れ

土肥氏には、主に以下の3つの流れがある。

相模土肥氏：鎌倉時代初期に相模国を中心に栄えた。
越中土肥氏：相模土肥氏の一族が越中国に移り、鎌倉時代後期から戦国時代末期にかけて勢力を誇った。
近江土肥氏：西遷御家人として鎌倉時代に移住し、足利将軍家の奉公衆として近江国で栄えた。

各土肥氏の詳細

相模土肥氏

相模土肥氏は、中村荘司宗平の次男である実平が、相模国土肥郷を領有したことに始まる。実平は源頼朝に忠実に仕え、厚い信頼を得ていた。しかし、和田合戦で和田方に加担したため一時的に衰退する。その後、実平の子孫である土肥実綱が鎌倉将軍九条頼嗣、執権の北条時頼、北条時宗に仕え、土肥氏を再び歴史の表舞台に引き上げた。この実綱の弟である土肥頼平が、後に越中土肥氏の祖となる。

越中土肥氏

越中土肥氏は、建長年間（1249年 - 1255年）に土肥氏の一族である土肥頼平が越中国（現在の富山県）に地頭として入ったとされる。しかし、その詳細は不明な点が多い。その後、越中国で勢力を拡大し、南北朝時代から戦国時代には越中国の代表的な国人として名を馳せた。

越中土肥氏は、越中国守護であった畠山氏の傘下に入り、畠山氏の家督争いにも関与した。土肥将真は畠山尚順に従って将軍に謁見し、1493年の明応の政変では畠山政長と運命を共にした。また、能登畠山家に仕えた一族もいた。

戦国時代に入ると、神保氏と椎名氏という二つの勢力の間で翻弄されたが、越後国の長尾氏が勢力を拡大してくると、当主の土肥政繁はこれに従った。一時は新川郡の大部分を領有するまでに勢力を拡大したが、上杉謙信の死後は上杉景勝に従った。しかし、織田氏の武将である佐々成政の攻撃を受け、一進一退の攻防を繰り広げた末、1583年に降伏し、越後国へと逃亡した。

その後、佐々成政と羽柴秀吉の争いを利用して旧領奪回を試みるも失敗し、越後国で没した。その死後、一族は最上義光に従ったものの、お家騒動に巻き込まれて自害し、越中土肥氏は滅亡した。現在でも、富山県中新川郡上市町には土肥姓が多く見られる。

近江土肥氏

近江土肥氏は、鎌倉幕府から近江国箕浦庄を与えられたことが始まりである。室町時代には、足利将軍家に直属する奉公衆（外様衆）として仕えた。番場城や鎌刃城を築き、交通の要衝であった近江番場周辺を守ったとされている。

1336年（延元3年）には、土肥六郎兵衛尉心光が足利尊氏の命により、近江国の箕浦谷に蔓延る野武士を鎮圧する功績を挙げ、その褒賞として箕浦庄を与えられた。その後、醒井（さめがい）を拠点として室町時代前期にかけて安定した領土経営を行った。しかし、戦国時代に入ると京極氏に領土を脅かされるようになり、拠点を山間地の枝折へ移して戦国期の動乱を生き抜いた。

関ヶ原の戦いでは西軍に与したため、当時の当主である土肥六郎兵衛は、土地や資産、記録文書を全て寺社に寄進し、鳥取へ落ち延び、近江土肥氏は消滅した。

脚注

参考文献

沼田頼輔『国立国会図書館デジタルコレクション 日本紋章学』明治書院、1926年3月。
太田亮『国立国会図書館デジタルコレクション 姓氏家系大辞典』 第2、上田萬年、三上参次監修、姓氏家系大辞典刊行会、1934年。

関連項目

小早川氏
畠山氏
佐々成政
* 城願寺 (神奈川県湯河原町)

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