神保氏

神保氏：越中を舞台に活躍した一族の興亡

神保氏（じんぼうし・じんぼし）は、上野国多胡郡辛科郷神保邑を発祥とする惟宗朝臣を祖とする一族です。家紋は「堅二引両」を使用しています。

室町幕府における台頭

神保氏は、室町幕府管領・畠山氏の譜代家臣として台頭しました。畠山氏の領国である越中国、能登国、紀伊国などの守護代を歴任し、越中国射水郡放生津に拠点を構えました。嘉吉3年（1443年）の文書には、神保備中守（国宗）の名が史料に初めて登場します。

越中国においては、当初は放生津城を主城とし、守山城、滝山城、増山城、日宮城などの支城を築きました。勢力が拡大すると、富山城を拠点としました。

応仁の乱では、東軍・畠山政長の腹心として神保長誠が活躍しました。明応の政変では、幽閉されていた将軍・足利義稙を救出し、放生津館（越中公方）に迎え入れるなど、最盛期を迎えました。

独立の試みと衰退

長誠の後継者・慶宗は、主家・畠山氏からの独立を目指し、一向一揆と手を結んで長尾能景を討つなどの行動をとりました。しかし、これが主君・畠山尚順（尚長）の怒りを買い、長尾・畠山連合軍による討伐を受けます。永正17年（1520年）の新庄の戦いで、慶宗は能景の子・長尾為景の軍に敗れて自刃し、神保氏は壊滅状態となりました。

天文期に入ると、慶宗の遺児とみられる長職が新川郡に富山城を築いて神保氏を再興し、新川郡守護代の椎名氏との抗争を経て越中一国を席巻する勢いとなりました。しかし、椎名氏の援軍要請を受けた上杉謙信（長尾為景の実子）に敗北し、上杉氏に従属することになります。

その後、家中が武田派と上杉派に分裂し、内紛状態となって衰退。家中の実権は親上杉派の家老・小島職鎮に握られました。長職の嫡子・長住は武田派であったとみられ、越中を出奔して京に上り織田信長に仕え、越中帰還の機会を待ちました。

織田信長による越中侵攻と神保氏の滅亡

天正6年（1578年）に上杉謙信が急死すると、信長は長住に兵を与えて越中へ侵攻させました。長住は富山城に入城して神保氏の実権を取り戻しましたが、天正10年（1582年）に小島職鎮らが武田勝頼が流した虚報を信じて一揆を起こし、長住は富山城を奪われ幽閉されました。織田勢により富山城は奪還されたものの、信長はこれに怒って長住を越中から追放し、越中守護代としての神保氏は滅亡しました（『信長公記』）。

江戸時代以降の神保氏

紀伊畠山氏に仕えた神保春茂は、豊臣政権期に高市郡6千石に封ぜられ、その子の神保相茂は関ヶ原の戦いの戦功で千石の加増を受けました。しかし、大坂夏の陣天王寺の戦いで相茂をはじめとする神保勢は大多数が討ち死にし、壊滅。相茂の子・茂明は幼少であったものの父の遺領を継ぐことを許され、その家系は大身旗本として存続しました。茂明の孫・重同は上野安中藩板倉氏の養子となり、藩主を継ぎました。

庶流の神保氏張の家系は、佐々成政、徳川家康に仕えて旗本となりました。会津藩臣の神保氏も越中神保氏の出自と伝えられています。また、長誠から分かれた紀伊神保氏も、豊臣氏、徳川氏に仕えて旗本として生き残っています。

日本最大の書店街として知られる東京の神保町の地名は、元禄年間（1688年 - 1704年）に旗本の神保長治が屋敷を構え、屋敷に面した道路が「神保小路」と呼ばれたことに由来します。この神保長治は『寛政重修諸家譜』によれば越中神保氏の流れをくむ（神保長誠の子孫にあたる）ものの、神保氏張の系統とは別系統です。

神保氏一族

(省略)

参考文献

太田亮「国立国会図書館デジタルコレクション 神保 シンボ ジンバウ」『姓氏家系大辞典』
高岡市史編纂委員会 編『高岡市史』
富山市史編さん委員会 編『富山市史』
「巻第千百八十二 惟宗氏 神保」『寛政重脩諸家譜』

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