地下家伝

『地下家伝』の概要と歴史的意義

『地下家伝』（じげかでん）は、江戸時代後期の天保年間に成立した、地下官人諸家の家系図をまとめた重要な文献です。本書は北面武士の三上景文によって編纂され、歴史的な価値を有しています。この文献は、当時の日本社会の官人やその家系に関する貴重な資料となっています。

編纂の背景

『地下家伝』がいつ、どのように編纂されたかの詳細は、現在も明確ではありません。ただし、三上景文は天保13年9月（1842年10月）から編纂作業を開始し、約1年半後の天保15年5月1日（1844年6月16日頃）に完成したとされています。三上景文の周囲には様々な出来事があり、その中で彼がこの書物を編纂するに至った経緯や動機については今後の研究が期待されます。

数回の改訂とその出版

『地下家伝』は、初版成成立後には数度にわたって改訂され、安政年間には最も最後の改訂が行われました。この書物の写本はいくつか存在していますが、印刷ではなく手書きで記されたため、誤字や欠落、構成の違いが見受けられます。特に昭和13年（1938年）に、国文学者の正宗敦夫が既存の写本を基に出版を行いましたが、そこで使用された写本間には文字や巻の構成に相違があり、特定の巻が欠けているという問題もありました。このことから、正宗版の『地下家伝』は完全版ではないとされています。そのため、明治維新以降の地下官人に関する情報は欠落している点があるため、今後のさらなる研究が求められます。

下橋敬長による補完

正宗敦夫の出版後、元一条家家臣で有職故実家の下橋敬長が、独自に『地下官人家伝』という続編を作成しました。彼は地下諸家の系図を明治や大正の時代まで調査し、正宗版には記載のない多くの人物を新たに補完しました。現在、この資料は京都府立総合資料館に収蔵されていますが、未だ刊本としては出版されていません。

内容の詳細

『地下家伝』は全33巻から構成されており、それぞれの巻には所属する官庁や摂家、宮家、門跡ごとに分けた歴代の当主の名前、生没年月日、父母の名、叙位・任官の履歴などの詳細が記されています。正宗版による構成は以下のようになっています。

1. 六位蔵人
2. 少納言局
3. 中務省史生など
4. 大膳職や内賢など
5. 弁官など
6. 内舎人
…（省略）
33. 秦氏三上家の系図

このように、各巻に豊富な情報が盛り込まれており、日本の歴史を研究する上での貴重な資源となっています。『地下家伝』は地下官人の系譜を通じて、当時の官職制度や家系の動向を知るための重要な手がかりを提供しています。今後も、その歴史的意義とされる文献としての評価が続くことでしょう。

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