正宗敦夫

正宗敦夫（まさむね あつお）

正宗敦夫は、明治14年（1881年）11月15日に生まれ、昭和33年（1958年）11月12日に没した、日本の国文学者、歌人です。戸籍上は11月30日生まれとなっています。小説家・文学評論家の正宗白鳥を兄に持ち、兄弟には植物学者の正宗厳敬、画家の正宗得三郎がいます。

生涯

岡山県和気郡穂浪村（現在の備前市穂浪）で生まれました。兄の白鳥が東京を拠点に活動したのに対し、敦夫は郷里で家業を営みながら、歌作と国文学の研究に励みました。1897年（明治30年）から歌人の井上通泰に師事し、島木赤彦、斎藤茂吉らとも交流を持ちました。

1909年（明治42年）には、歌文珍書保存会を主宰し、古書や稀少本の収集・刊行を行いました。1925年（大正14年）には、与謝野寛・与謝野晶子夫妻と共に「日本古典全集」シリーズの刊行に取り組みました。1927年（昭和2年）には、株式会社日本古典全集刊行会を設立しましたが、倒産。その後、長島豊太郎と協力して「日本古典全集」の刊行を継続しました。

1931年（昭和6年）には、『万葉集』の全歌の用字をまとめた『萬葉集總索引』を編集しました。これは『万葉集』の研究において重要な資料となっています。1936年（昭和11年）には、財団法人正宗文庫を設立し、自宅敷地内に文庫を建設。この正宗文庫は、貴重な資料を収蔵する施設として、現在もその役割を果たしています。

1952年（昭和27年）には、ノートルダム清心女子大学の教授に就任しました。1954年（昭和29年）には、岡山県文化賞を受賞しています。

研究と業績

正宗敦夫は、古典籍の収集と研究に情熱を注ぎました。特に『万葉集』の研究においては、詳細な索引を作成するなど、その業績は高く評価されています。また、「日本古典全集」の刊行にも尽力し、古典文学の普及に貢献しました。

人物

兄の正宗白鳥とは対照的に、郷里に根ざした活動を続けました。学究肌で、地道な研究を重ねる一方で、歌人としての才能も持ち合わせていました。また、古書や稀少本を愛し、その保存にも尽力しました。正宗敦夫の残した文庫は、現在も貴重な資料庫として活用されています。

刊行物

『正宗敦夫文集 1 ふぐらにこもりて』、平凡社〈東洋文庫〉、2024年7月、正宗文庫監修、小川剛生編注、ISBN 978-4582809169

歌碑

正宗白鳥生家跡近くの住吉神社（岡山県備前市穂浪）境内に正宗敦夫の歌碑があります。

家族・親族

兄：正宗白鳥（小説家、文学評論家）
弟：正宗厳敬（植物学者）
弟：正宗得三郎（画家）

参考文献

「正宗白鳥と敦夫」『岡山県総合文化センターニュース』第374号（1995年11月）および第375号（同年12月）。
新美哲彦「正宗敦夫について」『ノートルダム清心女子大学日本語日本文学科ブログ』。

外部リンク

『正宗敦夫』 - コトバンク
『正宗 敦夫』 - コトバンク
正宗白鳥と敦夫（おかやま人物往来）
正宗敦夫(まさむねあつお)について知りたい。 | レファレンス協同データベース
正宗敦夫氏について - 武蔵野書院
正宗敦夫について｜新美 哲彦｜日文エッセイ101｜日本語日本文学科｜ノートルダム清心女子大学

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