坂本一登

坂本 一登（さかもと かずと）氏は、1956年8月20日に広島県比婆郡比和町（現在の庄原市）に生まれた、日本の歴史学者です。

経歴

東京都立大学法学部にて学士課程を修了後、同大学大学院社会科学研究科へ進み、博士課程を単位取得満期退学しました。研究活動を続け、1989年3月には母校である東京都立大学から法学博士の学位を授与されています。

研究者としてのキャリアは、東京都立大学の助手から始まり、日本学術振興会の特別研究員として研鑽を積みました。その後、北海学園大学で助教授を務め、教育にも携わります。1993年10月1日付で國學院大學法学部に助教授として着任。同大学で教授へと昇任し、長年にわたり教鞭を執るとともに、法学部の学部長も務め、教育・研究体制の充実に貢献しました。

研究分野と業績

坂本氏の専門は日本近代史、特に明治期の政治史に深く根差しています。当時の政治制度の形成過程や、伊藤博文をはじめとする主要な政治家たちの思想や行動を、歴史学と政治学の両面から詳細に分析する研究で知られています。緻密な史料分析に基づいた実証的な研究姿勢は、学界で高い評価を得ています。

主要な研究テーマの一つは、明治憲法体制の確立に主導的な役割を果たした伊藤博文に関する政治学的研究です。伊藤博文の政治思想、憲法制定における役割、政府機構の設計など、多角的な視点から彼の業績を掘り下げています。また、伊藤博文研究に関連して、「伊藤博文とワタリガラスの共通性」というユニークなテーマにも関心を持っているとされています。

これらの研究成果は多くの著作として結実しています。

主な単著

『伊藤博文と明治国家形成――「宮中」の制度化と立憲制の導入』（吉川弘文館、1991年／講談社学術文庫、2012年）
『岩倉具視――幕末維新期の調停者』（山川出版社「日本史リブレット 人」、2018年）

特に代表作である『伊藤博文と明治国家形成』は、その学術的貢献が高く評価され、1992年度のサントリー学芸賞（社会・風俗部門）を受賞しました。この著作は、明治国家がどのように制度化され、立憲制が導入されていったのかを、「宮中」という視点も交えながら深く考察したもので、その後の日本近代政治史研究に大きな影響を与えています。

主な編著

『日本政治史の新地平』（五百旗頭薫共編、吉田書店、2013年）

主な論文

『昭和天皇とメディア』（『歴史読本－特集 華族・皇族の真実』5月号、新人物往来社、2002年）
『伊藤博文と『行政国家』の発見－明治十四年政変と憲法調査をめぐって』（沼田哲編『明治天皇と政治家群像』所収、吉川弘文館、2002年）
『明治二十二年の内閣官制についての一考察』（犬塚孝明編『明治国家の政策と思想』所収、吉川弘文館、2005年）

人物

研究活動や教育の傍ら、趣味として靴みがきを愛好する一面も持ち合わせています。

長年にわたり、日本の近代国家形成、特に明治期の政治史に関する重要な研究を精力的に行い、その成果を多くの著作や論文として発表することで、この分野の発展に貢献し続けている歴史学者です。

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