坂本良隆

坂本 良隆（さかもと よしたか）

1898年10月1日、岩手県盛岡に生まれ、1968年5月21日に没した日本の指揮者、作曲家です。多岐にわたる音楽活動を通じて、日本の音楽界に貢献しました。

経歴と師事した人々

坂本良隆は、若い頃から音楽への深い関心を示しました。1921年、さらなる研鑽を積むためドイツへと留学します。ベルリン音楽大学で指揮を学び、1925年に同大学指揮科を卒業しました。留学中および帰国後、彼は国内外の著名な音楽家たちに師事しました。ドイツでは、作曲家のパウル・ヒンデミット、指揮者のシュタイン、ヴァルター・グマインドルから薫陶を受け、日本でも山田耕筰や信時潔といった先達に学びました。これらの経験が、彼の音楽家としての基盤を築き上げました。

指揮活動と作曲

ベルリンでの学びを終え帰国後、坂本は指揮者として活動を開始します。オーケストラを率いて演奏会を行う傍ら、作曲家としても筆を執りました。彼の作品は多岐にわたりますが、特に社会性の高い作品を数多く手掛けたことで知られています。市町村歌や学校の校歌の作曲依頼を多く受け、地域の文化や学校の精神を歌に託しました。これらの作品は、現代においても多くの人々に歌い継がれています。

彼が作曲した主な市町村歌には以下のものがあります。

久慈市民歌（作詞：滝田常晴）
江津市歌（作詞：米沢天涯）

また、作曲した学校の校歌は非常に多く、その一部は以下の通りです。

中央大学校歌（作詞：石川道雄）
岩手県立盛岡第四高等学校校歌（作詞：目時隆太郎）
巣鴨中学校・高等学校学園歌（作詞：佐藤春夫）
筑陽学園中学校・高等学校校歌（作詞：原田種夫）
久慈市立久慈中学校校歌（作詞：砂子彦三郎）
久慈市立宇部中学校校歌（作詞：小田観螢）
久慈市立宇部小学校校歌（作詞：小田観螢）
日高川町立川中中学校校歌（作詞：西川好次郎）
壬生町立南犬飼中学校校歌（作詞：勝承夫）
狛江市立狛江第三小学校校歌（作詞：佐藤佐太郎）
福山暁の星小学校校歌（作詞：溝入杜水）

教育活動と著述

坂本良隆は、演奏・作曲活動と並行して、教育者としても後進の指導にあたりました。島根大学では教授として、大阪音楽大学では講師として教壇に立ち、多くの学生に音楽の知識と技術を伝えました。彼の門下からは、写真家としても知られる牛腸征司が作曲とピアノを学んでいます。

また、音楽に関する啓蒙活動にも熱心で、専門書や指導書を多数執筆、あるいは翻訳しました。これらの著作は、当時の音楽教育や研究に大きな影響を与えました。

彼が遺した主な著書には以下のものがあります。

『管弦楽の指導』音楽之友社 新音楽教育叢書 (1949年)
『指揮法入門』音楽之友社 音楽入門叢書 (1952年)
『幼な心 主題歌集』編曲 水星社 (1959年)
『木笛教則本 ソプラノ笛』編 音楽之友社 (1943年)
『日本民謡曲集』正続　音楽之友社 音楽の友歌集 (1956年-1959年)
『音楽概論』千蔵八郎共著 全音楽譜出版社 (1962年)
ヨハン・ヨーゼフ・フックス著『古典対位法』翻訳 音楽之友社 (1950年)
パウル・ヒンデミット著『和声学』翻訳 音楽之友社 (1952年)
パウル・ヒンデミット著『音楽家の基礎練習』千蔵八郎共訳 音楽之友社 (1957年)

坂本良隆は、指揮、作曲、教育、研究、翻訳と、音楽を取り巻く幅広い分野で活動し、その多面的な才能を発揮しました。特に、地域社会や教育現場に根ざした楽曲を多く創出し、日本の近代音楽史において重要な足跡を遺しました。

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